ジョン・バッカン『魔法のつえ』復刊

 二人の藤子先生が幼少期に愛読し、藤子マンガに多大な影響を及ぼした童話『魔法のつえ』(ジョン・バッカン)の復刊が発表されました! 

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■『魔法のつえ』
http://www.fukkan.com/fk/CartSearchDetail?i_no=68321840&tr=s
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【著者】ジョン・バッカン 著 / 黒崎義介 絵
【発行】復刊ドットコム
【定価】1,995円(税込み)
【発送時期】2013/10/下旬


「僕も藤本くんも夢中になって読んだ本!」(藤子不二雄A・談)


数多くの名作を生み出した藤子不二雄両先生が、少年時代に夢中になって
読んでいたといわれる伝説の童話『魔法のつえ』が、およそ60年ぶりに復刊!
藤本少年と安孫子少年は、この本を読みながらどんな夢を思い描いていたの
でしょうか? この本には、藤子作品のヒントがたくさん隠れています。


巻末には、藤子不二雄A先生が語る「この本の思い出」を新たに収録!
藤子ファンのみならず、現代の子どもたちにも是非読んで欲しいおススメの
1冊です!


▼内容
主人公のビル少年は、魔法使いから「魔法のつえ」をもらいます。そのつえ
を使うと、世界中のどこへでも、アッという間に飛んでいけるのです。
このつえのことは、ビル少年と、弟のピーター以外、誰も知らないのです。
ある日ビル少年は、つえの力で、幽閉されているある国の王子さまのところ
へ飛んでいきます。そこでビルは、王子さまを救うべく大活躍。
さて、ビルと王子さまの運命やいかに…。


※本書は、1951年・講談社刊『魔法のつえ』を底本に復刊するものです。


 藤子マンガがどんなふうに『魔法のつえ』の影響を受けているのか。藤子不二雄A先生の発言にその具体的な一例が示されています。

ぼくは小学生のころ『魔法の杖』というジョン・バッカンの書いた本を読んで、非常に感心したんだよね。主人公の少年が、おばあさんに不思議な汚い杖をもらって、それをクルクルッと回すと突如、不思議な国へ瞬間移動しちゃうわけ。そこは王位を争っている中世の王国で、悪い大臣が王子を狙っている。そこへ入ってるんだけど、ときどき用事があって現代へパッと戻ることになるわけ。それで学校へ行ったりして、またあっちへ行く。それがすごく面白かったので、頭の中にずっと残ってて、その設定をマンガにしたわけ。だから、自分があっちへ行くかわりに、あっちから変な奴が来るという設定のパターンは、そこから始まってるんだよ。(『漫画超進化論』河出書房新社、1989年)

 藤子マンガにおいて非日常的な存在が日常のなかにやってくる設定は、『オバケのQ太郎』で確立された王道中の王道。この設定の源に『魔法のつえ』が息づいているわけです。A先生によれば、『魔法のつえ』では“こちらの少年があちらの世界へ行く”という設定だったものを、藤子マンガではその設定を逆にして“あちらの世界の住人がこちらの世界へやってくる”というふうにした、ということです。


 藤子・F・不二雄先生は、「幼児期から少年期にかけてのSF体験」を尋ねられたさい「それは毎度のことながらジョン・バッカンからはじまる」とお答えになったことがあります。(SFコミックス「リュウ」Vol.4、1980年)
 つまりF先生は、ご自身のSF体験のルーツに『魔法のつえ』があった、とおっしゃったわけです。F先生の“すこしふしぎ”ワールドの原点のひとつが『魔法のつえ』だったのです。


 そのように、藤子マンガの源流のひとつと見なせる重要な作品が、ジョン・バッカン『魔法のつえ』なのです。それが60年ぶりに復刊され、巻末にA先生の語る「この本の思い出」が収録されるということで、じつに慶賀すべき朗報です。今の子どもたちにも読んでもらいたい作品ですし、藤子研究の重要な参考文献にもなろうかと思います。


 ちなみに、復刊される『魔法のつえ』の底本となる版(1951年・講談社)が森下文化センターで開催中の「『漫画少年』とトキワ荘の時代〜マンガが漫画だった頃」で展示されているはずです(私はまだ行けてません・涙)。その本は私の蔵書を貸し出したものでして、裏表紙には前の持ち主のお名前が大きく書かれています(裏表紙が見えないように展示されていると思いますが)。


 私の持っているジョン・バッカン『魔法のつえ』は、こんな感じです。