ワクチン接種のころに読みたい藤子Fマンガ

 今月12日の時点で新型コロナウイルスワクチン接種2回目を終えた人の割合が日本の全人口の5割を超えた、と報じられました。

 https://www.asahi.com/articles/ASP9F61JZP9FULFA018.html

 https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210913/k10013257151000.html

 

 藤子・F・不二雄先生のマンガのなかには、ワクチン接種をする前後のタイミングで読み返すとより実感をともなって心に響くひとコマがいくつもあります。

 たとえば……

 

『流血鬼』日本にも上陸したらしいマチスンウイルスへの感染にひどく怯えるガールフレンドを、主人公の少年が「だいじょうぶだよ。予防ワクチンももうすぐできるらしいし」と慰めるコマ。

 パンデミックの渦中では、やはりワクチン開発が希望になるのだなあ、と思わされます。(『流血鬼』の内容は全体的にこのコロナ禍のなかで読み返すと真に迫って感じられます)

 

『懐古の客』:未来の世界から現代へやってきた時間旅行者のヨドバ氏が食中毒と虫さされとおたふく風邪の合併症で異常なほど重症化してしまった理由として、現代人の男性が「雑菌等に対する抵抗力が皆無だって。どうやらヨドバ氏は出発前の予防注射を怠ったらしい」と語るコマ。

 

大長編ドラえもん のび太ドラビアンナイト8世紀ごろのアラビアへ向かうにあたって時間旅行公社のガイドロボット・ミクジンが「伝染病や水あたりを防ぐための混合ワクチンを注射して、さあ!でかけましょう!!」と言うコマ。

 『懐古の客』のひとコマとともに、衛生環境の異なる世界(この場合は過去の世界)を旅するさいにはワクチン接種は不可欠だと教えられます。 

 

ドラえもん 宇宙戦艦のび太を襲う』地球征服をたくらむ宇宙ばい菌がのび太の胃の中に侵入。苦しむのび太の腹に、ドラえもんがウルトラスーパーオールマイティワクチンを注入するコマ。

 新型コロナウイルスが変異することでせっかく接種したワクチンが効かなくなるかもしれないとか、ワクチン2回接種しても感染してしまうブレークスルー感染が起こることがあるとか、接種して何ヶ月かしたらワクチンの効果がずいぶん低減してしまうとか、そういった話を目にしていると、ウルトラスーパーオールマイティワクチンみたいなワクチンが本当にあったらなあという夢想が切実なものになってきます。

 

 ところで、現在日本人に摂取されている新型コロナウイルスワクチンの大半は、mRNA(メッセンジャーRNA)ワクチンです。ファイザー製もモデルナ製もmRNAワクチンなのです。

 mRNAワクチンは、ウイルスのタンパク質をつくるもととなる遺伝情報の一部を体内に注射する…というものです。注入された遺伝情報をもとに、体内でウイルスのタンパク質の一部がつくられ、それに対する抗体などができることでウイルスに対する免疫ができてくるわけです。

 こうしたmRNAワクチンの仕組み・効能を知ったとき、私は『おれ、夕子』をちょっと思い出しました。『おれ、夕子』では、“ある人物のDNAを抽出して液状にし、それを他人の体内に注射することでその他人の身体を変化させる”ということが行なわれます。そこのところでmRNAワクチンの仕組みとイメージが重なるのです。