『魔太郎がくる!!』11巻を読み返す

 私の藤子不二雄Ⓐマンガ体験の原点はどこだったか……

 

 藤子・F・不二雄先生との共作『オバケのQ太郎』を除けば、私が初めて出会った藤子不二雄Ⓐマンガは(記憶の限りでは)『魔太郎がくる!!』でした。小学校中学年(3~4年)のころだったと思います。

 それころの私は、これといって多くのマンガを読むような子どもではなく、「コロコロコミック」の創刊によってようやく毎号のごとく購読するマンガ雑誌ができた感じです。それまでは、マンガを読むといったら小学館の学習誌とかそういう本に載ったマンガを読むのが通常だった気がします。

 当時はⒶ先生の作品がアニメ放送されているわけでもなく、なかなかⒶマンガに出会う機会がありませんでした。

 「週刊少年ジャンプ」や「週刊少年チャンピオン」を少しばかり読んでいた記憶もありますが、そこでⒶ先生のマンガを読んではいないはずです。

 

 そんなわけで、記憶にある限りでは、少年チャンピオンコミックスで読んだ『魔太郎がくる!!』が、私にとって藤子不二雄Ⓐマンガ初体験となるのです。

 読んだとたん非常にハマりました。被害者的な主人公が最後に必ず復讐を遂げる話のカタルシスがたまりませんでした。

 

 当時は2人で1人の「藤子不二雄」名義でしたから、『ドラえもん』や『オバケのQ太郎』の作者がこんな怪しいマンガも描くんだ!と“藤子不二雄の作風の異様な幅の広さ”に驚愕させられもしました。それは他のいくつもの藤子作品で感じたことですが、そのたぐいの驚きを私にはっきり授けてくれた最初の作品が『魔太郎がくる!!』だったのです。

 

 そんな少年時代の経験もあって、Ⓐマンガでいちばん好きなのは?と問われたら『魔太郎がくる!!』と答えることが多いです。

 でも本音を言えば、Ⓐ先生の膨大な作品群からどれか一つを選ぶのはあまりにも難しすぎます。酷です。

 だって、『怪物くん』も『忍者ハットリくん』も『フータくん』も『まんが道』も『少年時代』も『夢トンネル』も『笑ゥせぇるすまん』も『ブラックユーモア短編』も『黒ベエ』も『仮面太郎』も『マボロシ太夫』も『愛ぬすびと』も『プロゴルファー猿』も『ブラック商会変奇郎』も『無名くん』も『ミス・ドラキュラ』も………挙げだしたらキリがないので止めますが、み~んな大好きですもの。藤子不二雄Ⓐワールドは私にとって大好きな作品の宝庫なのです。こうして作品名を単純に列挙しただけでわくわくしてきます。

 

 先述のとおり、私が初めて読んだⒶマンガは(共作を除けば)『魔太郎がくる!!』で、読んだ媒体は連載雑誌ではなく単行本(少年チャンピオンコミックス)でした。

 ただ、残念なことに、最初に読んだ巻が何巻だったかよく覚えていなくて……。

 あの巻だった気もするし、この巻だった気もするし……と初めて読んだ巻候補がいくつかあるのですが、どの巻だったかは定かではありません。1巻とか2巻でないのは確かなのですが……。

 そこで、最初期に読んだ巻の一つであるのは間違いなく、しかも内容的に好みの11巻を重点的に再読しました。私の藤子不二雄Ⓐ体験の原点をたどるという意味で…。

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 あらためて、11巻いいですね~!

 1つめの話が「フランケンシュタインを愛する男」で、初っぱなからグッと心をつかまれます。

 そこから、『ジキル博士とハイド氏』をアイデア元とした「通り魔」、『鏡の国のアリス』をヒントとした「鏡の中へ」と、1話目の「フランケンシュタイン…」も含めてⒶ先生の怪奇幻想趣味がみなぎる話が続きます。

 その次の「黒い雪とともに」はザ・ホラー!というたまずまい。

 「パイ投げ仕掛け人」を読むと、パイ投げってユーモアや冗談としては通用しづらいよな、と痛感させられます。冗談が通じないとはこういうことだ、と見せつけられるような話です。

 「無気味な侵略者」は、あかの他人の家に押しかけて強引に住みつく厚かましいヤドカリ一家の話。ラストの魔太郎の復讐がなんだか理不尽で「おいおいそんな解決でいいの?」と思わせますが、それも含めてインパクト大の一編です。

 11巻の締めは、大人気アイドルスターの裏の顔を描いた「クイズイエスかノーか」。美人やスターの裏の顔を描くって、実にⒶ先生らしいモチーフです。

 

 少年チャンピオンコミックス『魔太郎がくる!!』11巻を読み返したのを皮切りに、Ⓐ先生を偲んでⒶマンガを再読していこうと思っています。