ドラマ『まんが道 青春編』一挙再放送と大みそか

 この年の暮れに、藤子不二雄Ⓐ先生原作のドラマ『まんが道青春編』の一挙再放送が2夜にわたり行なわれました。

■放映スケジュール

12月19日(月) 午後11時50分~翌午前2時30分 第1回~8回 (月曜深夜)

12月20日(火) 午後11時50分~翌午前2時10分 第9回~最終回 (火曜深夜)

19分30秒×全15回

https://www.nhk.jp/g/blog/y201c3fmxc/

 

 藤子不二雄Ⓐ先生の自伝的マンガ『まんが道』が初めてドラマ化されNHK銀河テレビ小説の枠で放送されたのが、1986年11月17日~12月5日のことでした。主人公の満賀道雄藤子不二雄Ⓐ先生の分身)を竹本孝之さんが、才野茂藤子・F・不二雄先生の分身)を長江健次さんが演じています。

 ドラマ『まんが道』は高い評判を得たようで、翌年夏に続編が放送されることに。それが『まんが道 青春編』(1987年7月27日〜8月14日放送)です。

 前作は、藤子先生の故郷、富山県高岡市が主舞台でしたが、続編は2人が上京してからの物語。両国の下宿先やトキワ荘を舞台にドラマが繰り広げられます。

 オープニング主題歌は前作と同様、竹本孝之さんが歌う『ホールド・ユア・ラスト・チャンス』ですが、歌詞が2番のものになっています。主題歌とともに流れるオープニング映像は、UFOが飛び去ったあとにできた道を主人公2人が力を合わせて進んでいく姿を映し、その映像と交差するように、オバQドラえもんパーマン、猿、怪物くん、ハットリくん21エモン、ウルトラB、ジャングル黒べえといった藤子キャラクターたちのカラー図版が画面の下から上へと移っていきます。

 手塚治虫先生は前作と同じく江守徹さんが演じていますが、テラさん(寺田ヒロオ先生)は渡辺寛二さんから河島英五さんにキャストチェンジ。そのほか、石森章太郎赤塚不二夫鈴木伸一、角田次郎、永田竹丸、森安直哉といった実在の各先生がたが多数登場するところが前作との際立った違いです。石森章太郎役を演じたのが、石森先生の実の息子・小野寺丈さんというのは適役としか言いようがありません。

 数々の藤子アニメに出演した名声優・肝付兼太さんや、原作者の藤子不二雄Ⓐ先生がゲスト出演する回もあって、この辺のキャスティングは藤子ファン大喜び。さらには、トキワ荘に住む美人姉妹役で高木美保さんと森高千里さん、中華食堂・松葉の店員役で鈴木保奈美さんが出演しており、いま見るとレア映像満載といった印象です。

 

 以上、私なりにドラマ『まんが道青春編』を紹介してみました。

 

 そんな『まんが道青春編』が、このたび地上波のNHK総合で再放送となりました。地上波での放送ということで、大勢の人が気軽にチャンネルを合わせて同じ時間にオンエアを楽しむことができて、年末の深夜にあたたかい贈り物をいただいた気分です。

 このドラマを観るだけならDVDなどを再生していつでも観られるのですが、今回は年末に地上波で一挙再放送してくれたことに大きな意味があり喜びがあります。その“年末”というのが、藤子不二雄Ⓐ先生が他界された年のものであるというのもまた意味深いことでしょう。

 『まんが道青春編』一挙再放送を視聴することで、大勢の方々と心を合わせてⒶ先生を追悼することができた……。そういう尊い気持ちになれました。

 

 ただ、あんまりしんみりとしながら観ると、年末なのに心がしんどくなってつらいので、Ⓐ先生を悼みつつも、なるべく手放しで楽しもう!とのスタンスでリアルタイム視聴しました。

 リアルタイム視聴したときの、とりとめもない感想をざっと書き残しておきます。年末気分も手伝って、作品の本筋や重要ポイント以外のところで勝手に盛り上がりながら視聴していた気がします。

 

・『まんが道青春編』の台本。第6回〜10回の分だけ持っています。

 

・この画像は、本放送中新聞に掲載された短評です。“改めて認識させられたのは、漫画界における手塚治虫という存在の、けた違いの大きさだ”(中日新聞1987年8月1日付テレビ欄より)

 

 さて、一挙再放送第一夜の始まりです!

 放送開始時刻がやってきて、第1話スタート。1話を観てあらためて感じたのは、「毒蛇はいそがない」という、原作にも出てくることわざがけっこう繰り返し出てきたなあ、ということ。何かピンチのとき「毒蛇はいそがない」を呪文のように唱えると気分が落ち着いてきて、今まで焦り気味だった心が「なーに、あわてることはないんじゃないの」という気分になる、とⒶ先生が語っておられたのを思い出しました。

 

 両国の下宿先のおじさん役は伊東四朗さんです。伊東四朗さんといえば、真っ先に頭に浮かぶ姿が実写版の喪黒福造。伊東さんは、生身の身体で喪黒らしさを醸し出すため、カメラが回っている間はまばたきしないという俳優魂を見せてくださいました。

 そして、今年10月31日に行われた藤子不二雄Ⓐ先生お別れの会で伊東さんがⒶ先生のエピソードを語られたことも忘れがたいです。

伊東は99年に放送されたテレビ朝日系ドラマ「笑ゥせぇるすまん」の実写版に主演し、主人公の喪黒福造を演じた。出演について「断っちゃったんです」と明かし、「そうしたら先生が『会いたい』と言って、開口一番『喪黒はあんたしかいないんだ』と言われたのが、初めての言葉です」と振り返った。役については「あんなに苦労したものは今までなかった。何とかやり抜いて、1作目の放送はいい視聴率だった」。当時の藤子さんの反応についても「あんまり笑わない人なんですけど、ニヤッと笑ってくれました。『よくやったね』と言ってくれました」と話した。

https://www.nikkansports.com/m/entertainment/news/202210310001016_m.html?mode=all

(日刊スポーツのWEB記事[2022年11月1日5時15分]より引用)

 

 喪黒福造役のオファーをいったんは断ったもののⒶ先生から直接の説得を受けて引き受けた、というエピソードが語られています。Ⓐ先生から「喪黒はあなたしかいないんだ」なんて説得されたら、それはもう引き受けざるをえない……というより喜んで引き受けたくなりますよね。

 Ⓐ先生が見込んだとおり、喪黒になりきった伊東さんの演技は怪演であり名演でした。実写であそこまで喪黒化するなんて至難のわざでしょう。

 

 その伊東さんが演じた両国の下宿先のおじさんの妻、すなわち下宿先のおばさん役は水前寺清子さんでした。水前寺さんと藤子先生の関わりといえば、1985年3月14日NHKで放送された『この人 藤子不二雄ショー』がただちに想起されます。二人で一人の藤子不二雄を特集したショー形式の番組で、水前寺さんが司会をつとめたのです。手塚治虫先生と武田鉄矢さんがゲスト出演するという豪華さでした。

 

 前作のドラマ『まんが道』で重要な役回りだった立山新聞社の虎口部長が青春編にも登場してくれました。虎口部長を演じるのは前作と同じ、蟹江敬三さん。蟹江敬三さんといえば、1988年放送の連続ドラマ『藤子不二雄の夢カメラ』で渡辺美奈代さん演じる主人公のお父さん役をやっていたのが藤子ファン的に印象に残っています😊

 

 その蟹江さん演じる虎口部長が満賀道雄才野茂を連れて銀座の寿司屋へ行くシーンがあります。寿司屋の大将の役を演じたのは今西正男さん。今西さんはモノクロ『怪物くん』でフランケンの声を担当した方でもあります。(そのことは自分ではすぐに気づけず、ある方にご教示いただき「そういえばそうだった!」となりました)

 今西さんが寿司屋の大将役で出演したのと同じ回に、肝付兼太さんが秋山書店の編集長役で出演しており、肝付さんはモノクロ『怪物くん』で番野の声をやっていたので、この回にはモノクロ『怪物くん』の声優さんが2人出ていたことになります😊

 肝付さん×『怪物くん』の組み合わせでいえば、やはりシンエイ動画版『怪物くん』のドラキュラのイメージがずっと強いのですが。

 

 先述したように、トキワ荘に住む美人姉妹が高木美保さんと森高千里さん、ラーメンの出前を持ってくる店員さんが鈴木保奈美さんというのもポイントですね😍 このドラマで最もヒロインに相当するのは森高さんかな、と感じました。保奈美さんもオーラ漂う存在感を見せてくれました。

 

 今回の一挙再放送を観ている最中、画面に江守徹さん演じる手塚治虫先生が登場するたびに、心のなかで「手塚先生―――!」と叫んでしまっていました(笑)

 

 

 一挙再放送第二夜もリアルタイム視聴できました。

 ドラマオリジナルの登場人物、田辺金市(吉幾三さん)は、主人公2人の部屋に居候したうえ押入れに入るシーンがあったりして、なんだかドラえもんを思い出させたりもする存在でした。しかしあんまり居候してほしくない居候だったので、田辺金市のシーンを観ているときは「これがハットリくんドラえもんだったら、とびっきり嬉しいのになあ」などと勝手なことを思ったのでした(笑)

 

 チューダー・パーティーのシーンを観たらチューダーを非常に飲みたい衝動にかられました。が、深夜だったこともあって飲むのは控えました。

 

 第10話~11話あたりで『まんが道』史上最悪の事件が起こります。あのおそろしき原稿大量落とし事件……。恐怖の催促電報……。ほんとうに心臓に悪い電報です。そうしてゲンコウオクルニオヨバス……。

 落胆する満賀にお母さんがかけた言葉が胸にしみました。

 

 東京に戻った満賀&才野をテラさんが「ばかやろう!!」と𠮟ります。このセリフ、原作では「ばかっ!!」だったなあ、などと思い出しながら、藤子ファン仲間さとちゃんさん制作のテラさんフィギュアにご登場願いました。

・「ばかっ!!」

 

 2人を励ます会のシーンでは、仲間の尊さをしみじみ感じたなあ。

 

 第14話、新宿の酒場のシーンで藤子不二雄Ⓐ先生ご降臨です! 「なろうなろう明日なろう明日は檜になろう」と言いながらテラさんと満賀の肩を叩いて新漫画党メンバーを励ます酔客の役で、ほんの少しだけ唐突に藤子Ⓐ先生が登場するのです。

 個人的に、この夜のクライマックスがこのシーンでした😊

 

 この画像は、『まんが道青春編』最終回(1987年8月14日)の番組表。出演者の掲載順を見ると、主役2人の次に当時新人だった森高千里さんの名が。

 このたび一挙再放送を視聴して、淡いヒロイン役だった森高千里さんのういういしい演技が思いのほか印象に刻まれました。私は若いころ森高さんのユニークな歌詞が好きで「たしか、なんらかのCDを買ったはずだよなあ」と探してみたら、1995年発売のベスト盤を発掘できました。

 このアルバムにも収録されている森高千里さんの「気分爽快」と、河島英五さんの「酒と泪と男と女」……。『まんが道青春編』の出演者2人が歌う曲が、私にとって、「飲む」という動詞が力強い魅力をともなって伝わってくる2大飲酒ソングなのです(笑)

 

 そんなこんなで、2夜におよぶドラマ『まんが道青春編』一挙再放送、楽しませてもらいました。

 藤子不二雄Ⓐ先生が他界された年の暮れにこのドラマを地上波で放送してもらえたことに感謝するばかり。ファンにとってあまりに悲しく寂しいことが起こってしまった年の暮れに、こういうかたちでⒶ先生へ惜別の情を送る機会を授けてもらえて、ほんとうにありがたく思うのです。

 多くの方々と共に先生を追悼できた気がします。

 

 

 今月の29日と30日の夜には、藤子ファン関係・マンガ好き関係の友人知人たちとリモート忘年会をやりました。(29日と30日は別メンバーです)

 どちらのリモート忘年会も5時間超えの長丁場となり、ぞんぶんに年忘れトークができました。

・30日のリモート忘年会では、藤子不二雄Ⓐ先生に向けてチューダーで献杯

 

 そして、31日には市内のリサイクルショップで今年最後のお買い物。

 合計2000円くらいで昔の藤子関連レコード4枚を収穫できました。モノクロオバQ時代のソノシート2枚と80年代アイドルのレコード2枚です。

 伊藤つかささんのレコードは直接的には藤子レコードではありませんが、彼女がドラえもんに出てくる大人気アイドル伊藤翼ちゃんのモデルということでお迎えしてみました😄

 

 31日の夕方には、『大みそかだよ!ドラえもん 1時間スペシャル』の視聴も。番組内で放送されたうちの一編「天の川鉄道の夜」は2009年3月6日に放送された作品の再放送でしたが、大みそかの空気のなかで観ているとその名作っぷりがジーンと響いてきます。のび太を運転席に座らせてくれたり天の川鉄道への深い愛情がにじみ出るゴンスケ車掌のやさしさにグッと来たりも。

 

 

 今年も残すところ5時間ばかりとなりました。

 

 当ブログの今年の更新はこれで終わりです。

 ご訪問くださったみなさま、一年間ほんとうにありがとうございました。

 よい年をお迎えください♪