『トキワ荘青春日記+まんが道』発売

 6月22日、『トキワ荘青春日記+まんが道』(光文社)が発売されました。

 

 藤子不二雄Ⓐ先生がトキワ荘時代に綴った日記を一冊の本にまとめた著書が『トキワ荘青春日記』です。

 最初のバージョンは、1981年に光文社より刊行されました。1981年は、トキワ荘の解体が決まったことを受けて1月13日にトキワ荘ゆかりの漫画家たちがトキワ荘の一室に集まるトキワ荘同窓会が開かれました。5月25日には、NHK特集『わが青春のトキワ荘 ―現代マンガ家立志伝―』が放送。10月3日にはフジテレビ系で『ぼくらマンガ家 トキワ荘物語』というアニメ番組が放送されたりもして、それまでの歴史上でトキワ荘が最もメディアで注目を集めたのではないかと思える年が1981年だったのです。

 そんな時流のなか、同年の9月に発行されたのが、Ⓐ先生の『トキワ荘青春日記』でした。(むろん当時は「藤子不二雄」名義でした)

 

 『トキワ荘青春日記』が最初に新装復刊されたのは、1996年のことです。たしか、映画『トキワ荘の青春』公開に合わせての復刊でした。オリジナル本に収録されていた対談「藤子不二雄トキワ荘の同窓生と語る」や、「欄外面白付録(頭注) 構成藤子不二雄」が未収録となり、ほとんど日記本文のみ(注釈などもありますが)のシンプルな構成の本となりました。以後の復刊では、この本がベースとなります。

 

 20年の時を経て、2016年には復刊ドットコムより『トキワ荘青春日記 1954‐60』として新装復刊されました。唯一、光文社以外の出版社が刊行したバージョンです。

 そうしてこのたび、『トキワ荘青春日記』4度目の刊行(3度目の新装復刊)が実現したわけです。

 今回の新装復刊で最も特徴的なのは、書名が『トキワ荘青春日記+まんが道』とされたように、Ⓐ先生の自伝的マンガ『まんが道』『愛…しりそめし頃に…』からチョイスした図版を挿絵として使用していることです。日記に綴られたいろいろな事象とリンクする場面を『まんが道』『愛…しりそめし頃に…』から選び出して日記の挿絵としているのです。

 おかげで、これまでの3種の本と大きく差別化されましたし、日記の内容を具体的に映像としてイメージしやすくなりました。藤子ファンとして、Ⓐ先生の文章と画が紙の上で共振するさまをホットに味わえるのも心が躍ります。

 

 このたびの新装復刊版には、Ⓐ先生が本書のカバーイメージとして描かれていた最後のラフ画が掲載されています。それを遺作といってよいかわかりませんが、Ⓐ先生が描かれた画としては遺作に値するものではないでしょうか。遺稿という表現のほうがより適切でしょうか。

 

 巻末解説として、中条省平氏が書いた「トキワ荘時代の安孫子素雄クロニクル」を読むこともできます。

 

 このように本が簡単に立つほど立派なハードカバー仕様になっており、永久保存版感が増しています。

 

 私は本書を発売日(6/22)に手に入れたくて、発売日当日に近隣の書店を3軒巡ってみたのですが、どの書店にもありませんでした。

 翌日、名古屋の大型書店に足を運んで買えたのです。

 その書店には7冊平積みされていました。

 

 この本は、Ⓐ先生他界後はじめて新刊として刊行されたⒶ先生のご著書、ということにもなります。その意味でも記念碑的な一冊となりそうです。