日本テレビ版『ドラえもん』の主題歌歌手・内藤はるみさんと会う

 突然当たり前のことを言い出しますが、現在、アニメ『ドラえもん』はテレビ朝日系列で放送されています。

 1979年4月から放送がスタートしたテレビ朝日版『ドラえもん』(以下、テレ朝版『ドラえもん』)は、またたく間に国民的大ブームを巻き起こし、そのブームはやがて定着した人気となって、2023年の現在も放送が続いています。2005年に声優さんが一斉交替するなど大幅なリニューアルがあって騒然としたものの、アニメ『ドラえもん』の放送キー局といえばテレビ朝日であることに揺るぎはありません。それが多くの国民の共通認識でしょう。

 

 ところが、テレビ朝日で『ドラえもん』のアニメ放送が始まるより前の時代に、別の放送局で『ドラえもん』が放送されていたことがあるのです。

 それが、いわゆる日本テレビ版『ドラえもん(以下、日テレ版『ドラえもん』)です。

 

 当ブログをよく読んでくださっている方には今さら日テレ版『ドラえもん』の存在を紹介するまでもないとは思うのですが、この記事にふらりと立ち寄ってくださった方や日テレ版『ドラえもん』のことをまだご存じじゃない方に向けて、少しだけ紹介させてもらいます。

 

 日テレ版『ドラえもん』は、1973年4月1日から9月30日にかけて放送されました。全26回(52話)なので、テレ朝版『ドラえもん』の驚異的な長寿っぷりを思うと、短命で終わってしまった感は否めません。

 ドラえもんの声といえば、多くの方にとって(私にとっても)テレ朝版の前任者である大山のぶ代さんか現役の水田わさびさんの印象が強いでしょう。それに対し、日テレ版でドラえもんの声を演じたのは、第1回から13回までが富田耕生さん、14回から26回までが野沢雅子さんだったのです。大山さんや水田さんのドラえもんに慣れきった耳には、富田さんや野沢さん(とくに富田さん)がドラえもんの声をやっていたなんて、かなり意外に感じられるのではないでしょうか。放送期間の途中で声優さんが交替している点も気になるところです。

 

 そんな日テレ版『ドラえもん』は、長いあいだずっと再放送されていません。また、一度もソフト化されておらず、いま見たいと思ってもやすやすとは見られない、幻のアニメと言ってよい存在と化しています。

 1979年(テレ朝版『ドラえもん』がスタートした年)の7月から8月にかけて富山県富山テレビ放送で日テレ版『ドラえもん』が再放送されたものの、全話放送が完了する前に打ち切られる……なんてことがあったそうで、それが現時点での最後の再放送となっています。

 

 1968年生まれの私は、幼少のころ日テレ版『ドラえもん』のテレビ放送を視聴していてもおかしくない世代です。じっさい、同世代で日テレ版『ドラえもん』を見ていたという知人もいます。

 それなのに、幼少のころの私は、残念ながら本作をテレビでまったく見ていないのでした。そういう番組が放送されていることすら知らなかったのです。

 私の住む地域での日本テレビのネット局は中京テレビです。当時中京テレビはUHF波のテレビ局でした。1970年代あたりの自宅のテレビアンテナはUHF波の受信状態があまりよくなくて、中京テレビにチャンネルを合わせるのを避けがちだったことも、私が日テレ版『ドラえもん』に気づかず結果的にまったく視聴しなかった原因のひとつかもしれません。

 そうしたわけで、私は長いあいだ日テレ版『ドラえもん』を見られないままで生きてきました。私にとって本作は紛れもなく幻のアニメであり続けていたのです。 

 

 そんな私が日テレ版『ドラえもん』(の一部)を見られたのは、21世紀になってからのことです。藤子不二雄ファンサークルの催しでようやく目にすることができました。

 ※そのときのレポートをこちらで書いています。

 ■2006-02-15「旧ドラ」鑑賞記 https://koikesan.hatenablog.com/entries/2006/02/15

 

 

 と、そんなふうに日テレ版『ドラえもん』の話をここでしてみたのは、この番組の主題歌を担当した歌手の話をしたかったからです。

・オープニングテーマ「ドラえもん」(歌:内藤はるみと劇団NLT/作詞:藤子不二雄/作曲・編曲:越部信義

・エンディングテーマ「ドラえもんルンバ」(歌:内藤はるみ/作詞:横山陽一/作曲・編曲:越部信義

 ご覧のように、日テレ版『ドラえもん』ではオープニングテーマもエンディングテーマも「内藤はるみ」という方が歌っています。

 いったい内藤はるみさんとはどんな人物なのか、「日テレ版『ドラえもん』の主題歌を歌った人」という以上のことをよく知らないまま、ずっとすごしてきました。

 

 そこで本題の9月30日(土)の出来事になります。

 この日、その内藤はるみさんに会いに行ったのです。

 向かった先は、岐阜県岐阜市の和カフェ&ギャラリー「川原町屋」。東海地方在住の藤子ファン仲間3名と連れ立っておもむきました。

 この川原町屋に内藤はるみさんがいらっしゃる(日もある)のです。

 内藤さんがこのカフェにいらっしゃることが公になったのは、2020年2月10日にNHK総合で放送された『鶴瓶の家族に乾杯』においてです。

 俳優の本木雅弘さんがアポなしでたまたま訪れたカフェで応対したお店の女性が、会話の流れで内藤はるみさんと判明、しかも内藤さんがこのカフェのオーナーであることが明らかになったのです。

 番組のなかで内藤さんが日テレ版『ドラえもん』の主題歌「ドラえもん」の一節を歌うという一幕もありました。

 

 川原町屋のある岐阜市は、私の住む愛知県春日井市からそう遠い場所ではありません。先に言ったとおり、それまで内藤はるみさんについては「日テレ版『ドラえもん』の主題歌を歌った人物」という認識くらいしかなく、どんなお姿をされているかもほとんど知りませんでした。

 そんな謎に満ちた内藤さんのお姿がひょんなことからゴールデンタイムのテレビ番組で映し出され、隣県にいらっしゃることがわかったものですから、私のなかで俄然内藤さんへの関心が呼び起こされました。

 内藤さんが経営するそのお店へ行ってみたい、という願望が胸をよぎりました。行こうと思えばいつでも行ける距離なのですから。

 

 しかし、そう思いつつもなかなかタイミングと勇気を得られず、ぼやぼやしているうちにコロナ禍に突入。訪れる機会を逸してしまっていました。

 それがようやく、今年の夏になって藤子ファン仲間とのあいだで「内藤さんに会いに行こう」という話が持ち上がり、ついに訪れることがかなったのです。

 

・川原町屋。

 町家造りの建物で営まれ、カフェスペースは蔵をリノベーションした空間。とってもオシャレで風情があって居心地がよかったです。

 

 

・玄関から入ったところではかわいい和雑貨が販売されています。

 

 川原町屋を訪れたからといって内藤さんが毎日お店に出ておられるわけではないらしいので、今日はいらっしゃるかなあと心配でしたが、店内で内藤さんのお姿をちらりと確認。「わ~よかった~!」と一安心しました。

 

 

 内藤さんに接触する前に、まずはカフェで食事をとりました。

スペシャルバターチキンカレーがじつにおいしかった! 隠し味に天然鮎のなれ寿司ペーストと魚醤を使用しているとか。

 

 

・カレーとともに、昼間からビールと赤ワインも。

 

 食事を終え、会計時に応対してくださった内藤さんに声をおかけすると、気さくにお話をしてくださいました。

 日テレ版『ドラえもん』のオープニングテーマは藤子先生(おそらく藤本先生)が作詞されています。内藤さんはそのことを光栄に感じておられるご様子でした。藤子先生が作詞した歌を歌えたことを。

 『鶴瓶の家族に乾杯』で内藤さんがこのお店を営まれていることが紹介されて以降、全国から(遠くは九州から)ファンの方がやってきてくれるようになり、なかには「ぼくのなかのドラえもんの歌は内藤さんの歌です!」とおっしゃる熱い方もいたとか。

・内藤さんと写真を撮っていただきました!やったー!!

 

 

・レコードジャケットにサインをいただきました。ありがたや!

 

 

・同行者の一人・Hさんは色紙にサインしてもらったおかげで、別の芸名まで書いてもらえました。ウラヤマシイ!

 

 内藤さんは川原町屋のオーナーさんですが、毎日お店に出ておられるわけじゃないので(土日はできるだけ出るようにしているそうですが)、われわれが訪ねたタイミングでお店にいてくださって本当にラッキーでした。これが翌日(10/1・日)だったらお店に出ておられなかったそうです。

 内藤さんにお会いしたこの日(2023/9/30)は日テレ版『ドラえもん』の最終回が放映されてからちょうど50年という大きな節目の日でした。そんなことなどぜんぜん意識せず内藤さんに会いに行ったわれわれですが、あとになって同行者のHさんがこの日がそういう日だと気づいて一同興奮。こういう奇遇は無性に嬉しくなります。

 翌日に訪れていたら内藤さんに会えなかったし、会いに行った日が日テレ版『ドラえもん』最終回からちょうど50年の日だったことを思うと、この日内藤さんにお会いできたことがますます幸運な出来事だったと思えます。

 

 ほんとうに素敵な一日となりました。

 

 

 そうして11月5日(日)の話になります。

 この日、内藤はるみさんのお姿をふたたび拝見すべく、藤子ファン仲間と岐阜へ足を運びました。

 9月30日に内藤さんとお会いしたさい、11月5日に内藤さん出演のライブが開催されると教えていただいたので、そのライブを見に行ったのです。

 

 この日、岐阜の街は「ぎふ信長まつり」で盛り上がっていました。前年には木村拓哉さんが織田信長役で登場して熱狂を巻き起こしたあのお祭りです。

 今年の「信長公騎馬武者行列」の風景です。信長役は(他の役も)公募で選ばれた方がつとめました。

 

 そんなお祭りモードの岐阜の街で内藤はるみさんの屋外ライブがおこなわれたのです。

 内藤さんは幼なじみの方と「chum」というデュオを組んで音楽活動をされています。

 

 ライブ会場に到着して最前列に座ってchumの出番を待ちました。

 内藤さんがステージに立ったら、われわれがいることにすぐ気づいて手を振ってくださって嬉しかったです。

 

 いよいよライブスタート!

 chumが歌ったのは「待つわ」「いい日旅立ち」「いとしのエリー」「時代」など私が青少年期に親しんだ曲が多くて最高でした。美しい歌声でそれらの名曲を聴けてうっとりするばかり。

 「柳ヶ瀬ブルース」も熱唱されました。ライブ会場は岐阜の柳ヶ瀬でしたから、まさにご当地で「柳ヶ瀬ブルース」を聴けたわけです。

 

●セットリスト

翼をください

「待つわ」

いい日旅立ち

いとしのエリー

「悲しみにさよなら」

「時代」

恋のフーガ

「柳ヶ瀬ブルース」

「愛燦燦」

 

 内藤さんと初めてお会いした日からそんなに日が経たないうちにライブで内藤さんの歌声を聴けて嬉しい限りです。

 いつか、生で内藤さんの歌う日テレ版『ドラえもん』の主題歌を聴いてみたい!そんな望みがわいてきます。

 

 内藤さん、ありがとうございました!