『のび太の地球交響楽』劇場限定グッズとあらかじめ日記と雨じゃなくて飴が降る話

 現在公開中の映画『のび太の地球交響楽』を現時点で3回観て、その都度少しずつ劇場限定グッズを買っています。

 買ったグッズのラインナップから、私はこの映画を観てリコーダーとあらかじめ日記とミッカが気に入ったのだとあらためて察せられます😄

 

 あらかじめ日記が劇場限定グッズになったのが嬉しくて、あらかじめ日記ブックカバーとキーホルダーを真っ先に確保しました。

 複数の藤子仲間(原作が好き系の方)から、今回の映画で描かれた「あらかじめ日記に書いた文章を無効化する方法」に対するある指摘を聞きました。私もできればそこは原作の方法を尊重してほしかったと思うけれど、映画にあらかじめ日記が出てきたこと自体には素直に喜びを感じています。

 

 あらかじめ日記の登場する原作マンガ「あらかじめ日記はおそろしい」(てんとう虫コミックスドラえもん』16巻などに収録)を初めて読んだのは、小学生高学年のころだったと思います。この話を読む前から「あらかじめ」という言葉は聞いたことがあったかもしれないのですが、実質的に「あらかじめ」という概念を認識したのはこの話によってでした。「あらかじめ日記」というネーミングの語感のよさ、この日記の効力のすごさもあって、「あらかじめ」なる概念に気を引かれ親しむ好機を得られました。

 じつに個人的な感覚ですが、「あらかじめ」ってなんだか声に出したくなる語感なんですよ。そのうえ、自分で調べて漢字表記が「予め」だとわかると、「なるほど!予定とか予報とか予想の予か!!」と腑に落ちる感覚を味わえて、グイッと「あらかじめ」に気を引かれていったのです。

 そんな思いを味わえたのも、ひとえに「あらかじめ日記はおそろしい」のおかげです。仮に「あらかじめ」という言葉の意味をよく認識していなかったとしても、「あらかじめ日記はおそろしい」を読めば、「あらかじめ」ってこういうことなんだなと感覚的に把握できます。「あらかじめ」という概念との出会い!と言っては大げさですが、私の「あらかじめ日記はおそろしい」初読体験はそんな感じだったのです。

 

 そのような思い出深いひみつ道具が今回の映画『のび太の地球交響楽』に出てきてくれるのですから、素直に喜んでしまったわけです。

 

 そんな「あらかじめ日記はおそろしい」の話中に、空から雨じゃなく飴が降ってくる一コマがあります。

 いくらあらかじめ日記でも、空から雨じゃなく飴を降らせるなんて無理だろうと確かめてみたら、本当に飴が降ってきて、のび太は気味が悪いと感じます。そして、われわれ読者には、無理そうなことを書いたとしても一度書いたことは必ず実現してしまうんだと、あらかじめ日記の恐るべき力が印象づけられます。

 空から飴が降ってくる一コマ自体は、夢のある素敵な光景ですが、話の文脈から見ればこれは不気味さを含んだシーンなのです。

 

「あらかじめ日記はおそろしい」は、“あらかじめ日記ってありがたい”モードから始まって、途中から“あらかじめ日記って恐ろしい”モードへと転調していきます。終盤はかなり怖い事態を招きます。

 そんなふうに話が“ありがたい”モードから“恐ろしい”モードへの移行する過渡期(と言ってもごく短い過渡期ですが)にあるのが飴降りの一コマなのです。

 

「あらかじめ日記はおそろしい」のラストは、のび太がライオンに食べられるほかない絶体絶命の危機に追い込まれながら、次に描かれる最終コマで急転直下の解決を迎えます。

 絶体絶命の危機→次のコマで急転直下の解決、という豪腕展開は、たとえば「バイバイン」のラスト2コマにも通じる話の畳み方です。

 

ドラえもん』で雨ではなく飴が降ってくるコマが描かれた話は、「あらかじめ日記はおそろしい」だけではありません。「ねがい星」(てんとう虫コミックス10巻収録)や「ゴロアワセトウ」(てんとう虫コミックススペシャル1巻収録)でもそういうコマが見られます。

 どちらの飴降りも、童心と夢と駄洒落のココロが詰まったファンシーなシーンだなと感じます。

 なかでも「ねがい星」の、口をあけて飴をキャッチするドラえもんの動きと表情には非常に癒されます。ですから、このシーンをモチーフにしたグッズが発売されたときは、たいそう歓喜しました。

 2020年6月に郵便局のネットショップで発売された「ドラえもんレインアイテム」です。

 ほんと、いい表情してるなあ。