藤子不二雄A先生が岐阜にやってきた!

 10月11日(月・祝)午後3時から、岐阜県岐阜市の県民文化ホール未来会館3階・ハイビジョンホールにて、「マンガでゴルフ!?」というイベントが開催された。
 このイベントは、『あしたのジョー』『ハリスの旋風』『おれは鉄兵』などを描いた巨匠マンガ家・ちばてつやさん、プロゴルファーの小山由紀子さん、そしてわれらが藤子不二雄A先生が、ゴルフとマンガをテーマにトークをを繰り広げるトークショーである。司会進行は、マンガ家で大垣女子短期大学教授の篠田英男さん。私の世代の人間にとって篠田英男さんといえば、「コロコロコミック」に連載された「藤子不二雄のまんが入門」がとくに思い出深い。


 岐阜県は私の住む愛知県の隣県であり、しかも県庁所在地の岐阜市は名古屋からの交通の便がよく行きやすい場所にある。そんな場所に藤子不二雄A先生がおいでになるとなれば、これはもう、いてもたってもいられない。私は、藤子ファン仲間2人とともに、このイベントに出向いたのだった。


 イベント自体は午後3時から始まるのだが、我われは、朝の7時半にJR岐阜駅に着いてしまった。イベント会場の未来会館に向かうにはあまりにも早かったので、駅から歩いて行けるコーヒーショップに入り、藤子不二雄A談義を2時間くらい楽しんで、それから岐阜バスを利用して目的地へおもむいた。未来会館の近辺には、岐阜メモリアルセンター長良川スポーツプラザ、長良川国際会議場などの施設が集まっており、この日は「世界イベント村ぎふ 秋まつり04」という大規模な祭りが開催されていた。「マンガでゴルフ!?」も、その祭りの催し物の一つである。

 
 未来会館に到着して館内をうろついているうちに、顔見知りの岐阜県マンガ文化研究会の方々と遭遇、その後は彼らと行動をともにした。我われ3人も一応この研究会の会員なのだ。
 彼らが未来会館の入口に集まっていたので、我われも何の気なしにその場にいたら、なんと、藤子不二雄A先生が、ちばてつやさん、篠田英男さんと一緒に館内に入ってこられた。私は、予期していなかった出来事にびっくりするとともに、大いに感激した。
 我われの姿を見つけた藤子A先生は、こちらに近づいてきて、「やあ。今日のことがよく分かったねえ」と声をかけてくださった。そして、すぐに控え室の方へ歩いていかれた。


「マンガでゴルフ!?」が始まるまでにまだ3時間もあったので、未来会館6階の休憩室で岐阜マンガ文化研究会の方々とマンガ談義をして時間をやりすごした。興味が思い切り「藤子不二雄」に偏っている私なので、マンガという分野に広く関心を持った方々と話をしていると、とても勉強になる。
 そのさい、イベントのスタッフだけが持っている「マンガでゴルフ!?」の台本を見せていただいたりもした。


 午後2時15分にようやく、イベント会場のハイビジョンホールに入場できた。我われは藤子A先生の姿がよく見える最前列に座りたかったのだが、最前列はすべて関係者席になっていたので、やむをえず前から2列目の真ん中あたりに陣取った。
 いよいよ午後3時になり、トークショー「マンガでゴルフ!?」がスタート。ちばてつやさん、藤子不二雄A先生、小山由紀子プロ、篠田英男さんの順で舞台に登場した。
 藤子不二雄A先生には『プロゴルファー猿』、ちばてつやさんには『あした天気になあれ』というゴルフマンガの傑作があって、そうした作品と現実のゴルフとを絡めながらトークを展開していくのが、このイベントの趣旨である。
 篠田英男さんのきびきびとした司会進行で、藤子A先生、ちばさん、小山プロが、ゴルフを始めたきっかけ、ゴルフの魅力、作品発想のヒント、作品で伝えたいことなどを語っていった。


 藤子A先生、ちばさんともに、ゴルフの魅力は自然の中でプレーできることだとおっしゃっていたのが印象的だった。藤子A先生は、「ゴルフコースの千変万化ぶりが面白い」と言い、ちばさんは「ゴルフは雨が降っても風が吹いてもプレーするスポーツである」点を、魅力としてあげていた。
 藤子A先生がゴルフを始めたとき、最初に揃えたハーフセットやウェア、シューズは、上野のアメ横で買って全部で2万円ちょっとだった、という話にも興味を惹かれた。
 また、小山プロが、『プロゴルファー猿』の真似をして「旗包み」を狙ってみたことがあるが、あの技は現実には不可能だ、といった話をされたとき、藤子A先生は、「旗包みは、ボールをただ旗に当てるだけではだめで、旗に巻き込むようにして打たなければいけないんです」と小山プロに向かって丁寧に指導?され、なかなか面白いやりとりだと感じた。
 それから、作品で伝えたいことは何かという質問に対して、藤子A先生は「ただ生きているだけではつまらないから、夢を持って生きることが大切」、ちばさんは「才能豊かではない主人公を描きながら人間賛歌を表現したい」といった意味の回答をされた。
 藤子A先生は、こういう場でのトークに慣れていて、場内を笑いで包み込む面白発言を連発されていた。


 そのコーナーが終わると、この日都合で会場に来れなかったプロゴルファー・森口祐子さんのメッセージ映像が、ハイビジョンのスクリーンで流された。このとき、舞台にいる出演者からはスクリーンがとても観にくいということで、先生方は舞台から降りて関係者席に座られた。私の目の前の席にちばさんが、ちばさんの隣には藤子A先生がお座りになり、2人の巨匠マンガ家の真うしろにいる格好になった私は、森口プロの映像よりも、お2人のうしろ姿の方が気になって仕方なかった。
 岐阜城北高校ゴルフ部の部員や藤子A先生、ちばさんが、小山プロに自分のゴルフの弱点を直してもらう、というコーナーもあって、それぞれに小山プロからレクチャーを受けていた。


 このイベントは、本来、午後3時から4時半まで開かれる予定だった。ところが、進行上の手違いで、30分も前の午後4時に終わってしまった。それはそれで残念だったのだが、このあと午後5時から、岐阜県マンガ文化研究会主催の会員&関係者限定・立食パーティーが予定されていて、それに我われ3人も出席することになっていたので、心はおのずとそちらの方へ移っていった。なにしろ、このパーティーには「マンガでゴルフ!?」出演者の藤子不二雄A先生、ちばてつやさん、小山由紀子プロ、篠田英男さんも出席されるのである。藤子不二雄ファンである私にとっては、藤子不二雄A先生とお酒を飲みながら思う存分お話をする絶好のチャンスなのだ。はたして、思うように先生と会話することができるのか…「マンガでゴルフ!?」が終わった辺りから期待と不安が胸中に渦巻きだした。


 結果として、藤子A先生とは一時間ほどお話ができた。しかも先生はノリにノッて喋り続けてくださった。パーティーの場での発言なので、その内容をここで詳しく書くわけにはいかないが、まったく書かないのも寂しいので、明日の日記で、この立食パーティーの模様を大ざっぱにレポートしたいと考えている。