リニューアル『ドラえもん』スタート!

 昨年11月の〝大山のぶ代『ドラえもん』降板〟というすっぱ抜き報道で大きな騒動となり、徐々に新たな情報が開示されつつも、「いったい『ドラえもん』はどうなってしまうんだ」とファンをやきもきさせてきたリニューアル『ドラえもん』が、いよいよ本日4月15日午後7時から〝あっ、ドラえもんだ! 春満開パワーアップ60分スペシャル!!〟なる特番でスタートした。
 私は、今回のリニューアルにかかわる幾多の事前情報を総合した結果、不安や不満や寂しさよりも、新たなる『ドラえもん』への期待感のほうが大きく膨らんで、とにかく今日を迎えるのが楽しみだった。


 実際に第1回の放送を観て、その期待感が裏切られることはなかった。とくに、キャラクターデザインが原作に近づいたことが、私には最高の贈り物であった。原作マンガの内容をそっくりそのままアニメへ移行すれば必ず傑作になる、というわけでは勿論ないが、私の基本的な立ち位置をいえば、いわゆる〝原作派〟であって、『ドラえもん』に限らず藤子不二雄関連全般をひっくるめてもう少し正確にいうと〝両藤子不二雄先生が直接執筆した作品をこよなく愛する派〟なので、極端な話、本日放送されたアニメが傑作だろうとイマイチだろうと、〝原作マンガに接近してくれた〟というそのことに純然たる愉悦をおぼえるのである。
 その意味で、本日の『ドラえもん』は、少なくとも絵に関しては以前よりもはるかに原作に近づいており、脚本も演出も原作のおもしろさをアニメで体現しようと奮闘していて、しかも当分のあいだ原作にある話をアニメ化していく方針らしく、私には願ったりかなったりのリニューアルなのであった。


 だから、本日の放送を観ているあいだ、ずっと心地よい気持ちでいられたし、今回のリニューアルは間違いではなかった、と心から感じられた。そして、今後も楽しく視聴できそうな予感が強くした。
 そのように、リニューアルに対してほとんど肯定的な私であるが、大山さんや小原さんら旧声優陣のイメージを頭から拭い去るのが想像以上に困難で、新しい声優さんの声にはかなりの違和感をおぼえてしまった。
 ドラえもんのび太の会話が、この二人の会話なのだ、という実感に乏しく、とくにのび太については、小原さんの声が恋しくなってしまった。のび太のママの声は「若いな〜」という感想ばかりが先立ち、ジャイアンの声もどこかキャラクターから浮き上がっているようなそらぞらしさを感じた。
 これは、新しい声優さんたちが『ドラえもん』にふさわしくないとか、能力が足りないとかいう問題ではなく、旧声優陣のイメージがまだまだ私の心に強くいとおしくこびりついている、ということの現れだろうから、時間の経過がすべてを解決してくれるのだと思う。


 絵については、先に書いたように、原作に近づいてくれて嬉しい限りだが、はたしてこの絵を、メイン視聴者である子どもたちや原作マンガに思い入れのない層が受け入れてくれるかどうか、そこのところが心配だ。
 絵の動きはリニューアル前のほうがなめらかに感じられ、本日放送されたものは、もともとが動かぬ絵である原作マンガに似せようと頑張ったためか、どこかぎこちない感じがして、それが悪い意味では拙い印象になっているけれど、よい意味では素朴な味となり、さらにまた、そうした絵の動き方が、物語に小気味よいテンポを与えているようにも受け取れた。


 リニューアル『ドラえもん』の記念すべき第1話である「勉強べやの釣り堀」は、おおむね原作どおりに話が進行したが、途中からドラえもんのび太が海中に潜ってサメや大ダコに襲われる場面になり、これは原作にはないものであった*1。しかし、ドラえもんのび太が海中でサメや大ダコに遭遇する場面というのは、昭和53年に作られたパイロットフィルム「勉強べやのつりぼり」でも観ることができ、そのことからこの場面は、旧声優陣の『ドラえもん』初仕事であるこのパイロットフィルム作品へのオマージュだったと考えられる。


 あと気になったのは、しずかちゃんのママ。どのキャラクターも原作寄りになるなか、しずかちゃんのママの顔は原作を真似ることなく、これまでのアニメのデザインを引き継ぐかたちになった。

*1:原作では、ドラえもんのび太が、のび太の部屋でサメに襲われそうになる。大ダコは、原作にはまったく登場しない。