映画『のび太の恐竜2006』感想その2(ネタバレあり)

当記事は、映画『のび太の恐竜2006』の内容に具体的に触れていますので、まだご覧になっていないかたはご注意ください)


のび太の恐竜』の原作マンガは、1983年、「てんとう虫コミックス」に収録されるさい藤子・F先生の手によって大幅に加筆修正された。トビラを除いたページ数でいえば、「コロコロコミック」に連載された初出版150ページが、加筆修正によって186ページに膨らんでいる。(詳しくは、こちらを)
 1980年3月に公開された映画『のび太の恐竜』オリジナル版は、当然ながら、原作が加筆修正される前の作品だが、今回の『のび太の恐竜2006』は、これまた当然ながら、原作が加筆修正されたあとの作品である。だから、今回の映画で原作の加筆部分がどれほど反映されるのか、というのが、私の注目点のひとつだった。
 結果として、『のび太の恐竜2006』は、思いのほか加筆部分を反映していないという印象だった。というか、私が映画に反映させてほしいとひそかに思っていた加筆部分がほとんど反映されていなかったため、そういう印象にとらわれてしまったのだ。
 


 私が今回の映画に反映させてほしかった加筆部分… たとえば、白亜紀に来た5人が1億年前がいかに大昔なのか語り合うなかでドラえもんが具体的な歴史的事実を披瀝してその年月の長大さを示す場面や、スネ夫プテラノドンに食われる自分の姿を想像して気絶し、のび太しずちゃんを守ってやれないことを悔しがる場面などが、今回の映画で採用されなかった*1
 原作の加筆部分で今回反映されたのは、ドラえもんがネズミに似た原始哺乳類を見て驚く、白亜紀で集めた食材を万能加工ミニ工場で加工する、滝から落ちるドラえもんが交通安全お守りを出す、張り切って先頭を歩いていたのび太が疲れ果てて最後尾になる、といったところだ。(どの場面も原作からずいぶんアレンジされていた)



 ピー助を恐竜ハンターに渡して自分らを現代へ送り返してもらうか、ピー助を守って自力で日本まで歩いていくか皆で議論する場面で、原作の加筆修正版におけるジャイアンは、「おれは歩く!! のび太といっしょにな!!」と、自分を救ってくれたのび太への恩義を強調するが、今回の映画では、「みんな支え合ってここまで来た仲間だろ!」と、のび太に限定せずみんなへの友情を訴えた。ジャイアンのこの訴えが、ラストのスネ夫のセリフで反復され、感動を誘った。

*1:そもそも、1億年前がどれほど大昔か語り合う場面は、映画のオリジナル版や原作の初出版で描かれた部分すら、今回の映画ではカットされていた。