黒鉄ヒロシの「ようこそ」に藤子A先生登場

koikesan2006-06-05

 先月10日ごろ発売された雑誌「PHP」6月号の「黒鉄ヒロシの「ようこそ」」に、藤子不二雄A先生がゲストとして登場し、「元気の素は何ですか?」というテーマでホストの黒鉄氏と5ページにわたり対談を行なっている。
 黒鉄氏は対談の初めに「もう三十年来のおつきあいになりますが、仲間内では〝史上最強のじいさん〟(笑)と呼ばれるくらい、大先輩なのに、僕よりはるかにお元気でいらっしゃる」と発言、最後には「今日はほとんど喋らなくてすんで楽でした。喋るということも健康の秘訣かもしれない(笑)」と語っており、これだけでも現在72歳のA先生の壮健ぶりがうかがえる。〝最強のじいさん〟という表現は面白いし、本当にそのとおりだと思う。



 対談中、健康の秘訣について訊かれたA先生は、「強いて言えば、健康に留意しないのが健康の秘訣ですかね(笑)」と答えている。A先生は、こうした趣旨の発言をよくしていて、たとえば「週刊文春」2002年7月18日号でも「僕は健康のことは気にしないで、気ままにいってます。けっこう無茶な生活をしているんですが、幸い風邪ひとつひいたことがないんですよ」と述べている。健康にこだわることが精神的な負担となれば却って健康に悪いだろうし、自分の健康を気にせず気ままに生活できるような性格の持ち主は、何かとクヨクヨ気にかけて悩むタイプと比べれば、過度なストレスを溜め込むことが少なく、心身ともに健康を保ちやすいだろうから、A先生の言う〝健康の秘訣〟は一理あると思う。なかなか真似することはできないけれど。
 

 黒鉄氏が「体力の源はどこにあるのでしょう?」と尋ねると、A先生は、小さいころはまったく魚や肉を食べたことがなく、大人になってもそういったものをほとんど口にせず生活してきたことがよかったのではないか、と返答。大の偏食家で外食に困るほどのA先生は、ふだんは野菜や海藻が中心の食生活を送り、動物性たんぱく質といえば卵くらいしか食べないという。こうした偏食の話は今まで何度もA先生の口から語られたことだが、この話を受けた黒鉄氏が「人間モルモットによる研究の結果、健康に良い食生活のヒントは」云々と、A先生を人間モルモット扱いしたのが少しユニークな展開だった。
 偏食というのは体に悪いこととしてとらえられがちだが、A先生のご健康ぶりを見れば、外食に困るくらい極度の偏食も、その偏食の内容によっては健康にプラスの効果がある場合もあるのだとわかる。私は肉も魚も好きなので真似はできないけれど。



 A先生は、2002年に刊行した書き下ろしエッセイ『Aの人生』(講談社)で「毒蛇はいそがない」「果報は寝て待て」「明日にのばせることを今日するな」などの言葉を引きながら〝気楽的生活のススメ〟を説いている。人間の自然治癒力を信じるA先生は、頭が痛くても腹の調子が悪くても、薬を飲まず、医者へも行かず、ほうっておくのだという。すると、たいてい半日かそこらで治るというのだから、その自然治癒力は本物だ。自分の自然治癒力を全面的に信じることがプラスの自己暗示となって、もとより高いA先生の自然治癒力がいっそう高まっているのかもしれない。