「クイズ日本の顔」に藤子A先生出演

 10月10日(火)放送の「クイズ日本の顔」(NHK総合)に、“今週の日本の顔”として藤子不二雄A先生がゲスト出演し、A先生にまつわるクイズが出題された。クイズそのものはファンにお馴染みのネタばかりで全問正解は容易だったが、クイズとクイズの間に流れた映像にいくつか面白いものがあった。30分のクイズバラエティ番組としては上々の内容だった。


 A先生が自宅から駅まで歩いて通勤する風景や、A先生の生家・光禅寺でA先生が手塚先生から譲り受けた机に向かう姿などは、これまでほとんどとりあげられたことのない映像だけに新鮮な印象だった。
 A先生の通勤コースの途中にある階段の風景が『笑ゥせぇるすまん』「駅までの道」の作中で使われている、というくだりを見て、さっそく単行本を取り出し当該ページを開いてみた。「この階段が、A先生のご自宅から徒歩圏内(ということはF先生のご自宅からも徒歩圏内)にあるんだなぁ」としみじみページを眺めた。
 最寄の駅から小田急電車に乗り込み、窓ごしに手を振るA先生の姿はお茶目だった。先月この近辺を訪れたばかりなので、これらの映像はなおさら感慨深かった。


 光禅寺には何度か訪れたことがあるが、テレビで見るとまた新味を感じる。トキワ荘に入居するさい藤子先生が手塚治虫先生から譲り受けた机は今、光禅寺に置いてあるという。A先生が原点を思い出すためその机に向かって手塚先生の『ブラック・ジャック』を読み耽る映像が印象深かった。A先生の背後に置かれた衝立は、光禅寺開山650年を記念してA先生が執筆した喪黒福造の達磨だ。ドーンのポーズをとっていて迫力満点。その裏面には、同じくA先生の筆になる21体の野仏が描かれている。
 光禅寺住職の菊池大定氏の姿やA先生のお母様の墓のある墓地などが映ったのも目を引かれた。番組では映されなかったが、A先生のお母様の墓石には、お母様が好きだったというパラソルヘンべえの愛らしい姿が彫られている。ちなみに、A先生のお父様はこの寺の第49代住職だったので、お父様のお墓はお母様のとは別個に、歴代住職のお墓の並ぶ区画に設けられている。


 A先生が映画『少年時代』の主題歌を井上陽水さんに依頼したエピソードもとりあげられた。陽水さんが主題歌を引き受ける条件としてA先生に作詞をお願いした、という話で、A先生は2ヶ月かけて詞を作ったが出来上がった曲にA先生の詞はまったく使われていなかった、というオチがついている。番組ではA先生が作った詞は紹介されなかったが、実際にこの詞を読むと、陽水さんが番組内で言っていたように、A先生の感情が強くこもっていると感じられる。喜んだり悲しんだり傷ついたりした少年時代を回想しつつ、大人になった自分に気付き、少年時代に別れを告げる、といった内容で、「さようなら」という語がリフレインされたりして懐かしい少年時代との惜別の情が強く表出しているため、陽水さんはそれを実際の曲にはしにくかったのかもしれない。


 A先生の漫画家人生を語るうえで絶対欠かせない存在であるF先生との出会いや合作の仕方、コンビ解消なども(簡単にだが)紹介されたのも良かった。藤子不二雄の代表作のうち、どれがA作品でどれがF作品かという説明もあった。
 番組のラストで小池さんのモデル・鈴木伸一先生が登場し、小池さんばりにインスタントラーメンをすすってくれたところは、ちょっと胸がときめいた。




※藤子新刊情報


・『愛…しりそめし頃に…』最新作掲載の「ビッグコミックオリジナル」11月増刊号が10月12発売。


ビッグコミックススペシャル『愛…しりそめし頃に…』第8集、10月30日発売。


ぴっかぴかコミックスドラえもん』第14巻、11月1日発売。