映画『サマータイムマシン・ブルース』と『タイムマシン』

 映画『バブルへGO!!タイムマシンはドラム式』の感想を書いたついでに、最近ビデオで観返したタイムマシン映画を2作レビューします。


●『サマータイムマシン・ブルース』(本広克行監督/2005年)

 地方の田舎町にある大学のSF研究会が舞台。SF研とは名ばかりで、部員たちはSFが何の略かも知らない陽気でおバカな面々ばかり。そこに写真部の女の子や顧問の先生が加わって喜劇調に話が進んでいく、小ネタ・小ワザのきいたタイムマシン映画だ。
 クーラーのリモコンをめぐって今日と昨日を行き来しつつ、現在と過去の辻褄合わせをするためドタバタ劇が展開していく。


 もうとにかくおバカ度満点で笑えるのだが、タイムパラドックスのパズル的な要素もきっちり兼ね備えていて、観終わったあと「ああ面白かった」と心から思えた。前半の何気ない場面が後半の伏線になっていて、タイムスリップによって生じた矛盾と謎がワイワイガヤガヤと解かれていくさまは痛快。前半の細部を確認するため、もう一度映画を観たくなるほどだ。


 SF研の男子たちのグダグダなのに妙に高いテンションや、田舎町の夏の風景が実に暑苦しく描かれていて、そのなかにあってヒロインの上野樹里は一服の清涼剤だろう。
 SF研顧問役の佐々木蔵之介は、相対性理論の研究に明け暮れ気付いてみたら40歳を過ぎていたという万年助手で、学生たちにバカにされつつ、いい味を出していた。彼が、この理屈ぬきで進んでいくドタバタ喜劇のなかで、理論的な側面を解説・整理する役回りだった。


バック・トゥ・ザ・フューチャー』へのオマージュが感じられ、藤子・F先生のマンガで見られるタイムパラドックスものが好きな人(つまり私)のツボのついてくる映画である。




●『タイムマシン』(サイモン・ウェルズ監督/2002年)

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 原作は、タイムマシンというものが初めて登場した作品として名高いH・G・ウェルズの同名小説。この映画の監督サイモン・ウェルズは、H・G・ウェルズの曾孫にあたる。
 1960年に公開された映画『タイム・マシン』(監督:ジョージ・パル)のリバイバル作品といえるだろう。


 舞台は1890年代のニューヨーク。『LAコンフィデンシャル』『メメント』のガイ・ピアースが演ずる大学教授・アレクサンダーは、ある日、婚約者・エマを強盗に殺され、過去に遡ってエマの命を助けようと、変人扱いされながらもタイムマシンを発明。さっそくエマが殺された日に戻って彼女の運命を変えようとするが、エマは別の理由で結局死んでしまう。どうして過去を変えることができないのか疑問を感じたアレクサンダーは、疑問を解き明かす答えが未来にあると考え、タイムマシンで未来の世界へ旅立つのだった。


 80万年後の人類が断崖絶壁に造った住居の映像は、「遠い異世界へ来たなぁ」という臨場感を味わえて、個人的には本作最高の見どころだった。タイムマシンが未来へ進むにつれ、時代時代の風景が早送りでめまぐるしく変化するのも目を惹かれた。


 ストーリー的には、前半が恋の物語で、それが後半でいつのまにか異境冒険ものに変貌するため、前後半でテーマが分裂している感は否めない。恋の物語に時間のからくりを絡めた前半部のテーマを貫けば、そのほうが名作になったような気がするが、そうすると原作小説とまるで違う話になってしまうのだ。80万年後の世界での冒険を描いた後半こそが原作にある部分で、前半の恋の部分はこの映画用にあとからとってつけたものなのだ。後半部も原作と比べると相当脚色されている。