3DCG映画『STAND BY MEドラえもん』

 のび太くんの誕生日の翌日、8日(金)から公開の始まった映画『STAND BY MEドラえもん』を、公開2日目の9日(土)に名古屋ピカデリーで観てきました。もう少し早く感想をアップしようと思っていたのですが、タイミングを逸して今日になってしまいました(笑)


(以下、映画の内容に触れていますので、ご覧になっていない方はご注意を)
 

 


 藤子・F・不二雄先生の描いたマンガの『ドラえもん』から7つの短編(主に感動エピソード)を選んで再構築した映画……ということで、原作ではそれぞれ別個の短編をどうやって結びつけるのか気になっていました。が、ストーリーの全体をつらぬく明確な主旋律(ドラえもんのび太を幸せにすることが目的であり、のび太の幸せとはしずかちゃんとの結婚であり、目的を達成したら未来へ帰らねばならないという条件が課せられていること)で7つの話を有機的につなげていて、自然にストーリーラインに乗ることができました。7つの短編をひとまとまりの長編映画にしてしまおうという行為は少々乱暴だと思いますし、つぎはぎのような物語になる危険性もあるのですが、そのへんのところをどうにかクリアしてくれたことを評価したいです。原作のひとつひとつが良質なお話なので、それを器用に結びつけたこの映画からも良質なものを感じとることができました。



 そして、映像の魅力が大きかったです。フルCGの3D映像によって『ドラえもん』の世界を味わえたことが何より新鮮な体験でした。登場人物や背景の実在感に目を惹かれました。表情豊かな人形たちが緻密な背景のなかで演じる生の舞台劇を観ているような臨場感…と言ったらよいでしょうか。
 3Dの効果がわかりやすく発揮されたのが、タケコプターで飛翔する場面です。宙に浮く感覚や、スピードの緩急、迫ってくる障害物をよける動作などに3Dの力を感じました。タイムマシンのシーンも3D効果が大きかったように思います。なにぶん普段は3D映画を観ないもので、本作の3Dがどれほどのレベルなのか客観的には判断できませんが、3D慣れしていない私には3Dへの入口としてちょうどよかったかなと感じます。



 宣伝のキャッチコピーが「いっしょに、ドラ泣きしません?」であることからわかるとおり、この映画は泣けることを大きな売りにしています。ですから、どんなふうに泣かせる演出をするのだろう、あまりにもあざとく露骨なやり方だったら嫌だな、と心配でした。じっさいに観てみると、感動的な(泣ける)シーンを思ったより抑制的に描いてくれており、この点も良心的だったと思います。



 7つの原作のうち「雪山のロマンス」のパートが最もアレンジが効いていて、個人的には盛り上がりどころでした。藤子F先生のSF短編『あいつのタイムマシン』を思い出しました。「のび太結婚前夜」パートのしずかちゃんとパパのやりとりは、原作でもアニメでもいつも観ても心を揺さぶられます。パパのセリフ、沁みますね〜。そして同パートでの、ジャイアンの部屋で4人の青年が酒を酌み交わす場面! いつも完全無欠キャラの出木杉くんにそこはかとなく敗北感が漂っており、これまでの出木杉くんがあまり見せてくれなかった情けない系の人間臭さを目撃できた気がして、心に残りました。



 ドラえもんに「成し遂げプログラム」なる強制的プログラムがセットされている…という、この映画独自の設定がありました。7つの原作を緊密につないで必然性の高いかたちで終盤へ持っていくためにこの設定は便利だったと思います。ですが、ドラえもんにそんなプログラムをセットすること自体、なんだかドラえもんの主体性が奪われてしまうようで冷たいものを感じてしまうし、そもそもドラえもんのび太くんと一緒にいる動機にかかわる核心的な部分をイジられることに抵抗をおぼえないでもありませんが、まあ、この設定のおかげで7つの原作が散漫にならずつなげられたわけだし、この映画は『ドラえもん』の番外編的な作品だととらえた私は、“ココだけの設定”ということであまり気にせず物語と映像を楽しみました。
 ただ、この独自設定はやはり賛否両論の議論を呼んでおり、良いか悪いかは別として、この映画最大級のホットな論点となっているようです。



 すでに『ドラえもん』から離れてしまったような一般の大人とか、映画デートしたいカップルとか、素直に泣きたくて映画を観る、といった方々にもすんなりおススメしやすい映画かなあ、と感じました。そのニーズに応えるという意味で、これは良作だと思います。
 じっさい、『ドラえもん』から遠ざかっていた層が劇場に大勢足を運んでいるようで、この映画は相当ヒットし、この夏公開の映画で№1の興業収入を視野に入れられる位置に来ています。海外配給も21の国と地域で決定しており、そのうち11の国はこれまで映画ドラえもんの配給実績がなかったとか。
 http://news.mynavi.jp/news/2014/08/19/237/
 http://animeanime.jp/article/2014/08/19/19863.html

 いつもの映画ドラえもんと違う技法、違う時期、違うターゲットで新たな映画ドラえもんをつくったことが大きな効果をもたらしています。『ドラえもん』人気のポテンシャルの高さを再認識することにもなりました。



 
 ・劇場のショップではパンフレットのみ購入。


 
 ・別の日に、同映画の主題歌『ひまわりの約束』(秦基博)のCDも買っちゃいました(^^