「王かんコレクション」と小学生時代の思い出

ドラえもん』の「王かんコレクション」は、ドラえもんが流行性ネコシャクシビールスをばらまいて王冠コレクションを流行らせる話である。
 印刷のずれた王冠に値打ちがあるとか、駅前の切手屋が王冠屋に商売替えするとか、三河屋で8月12日に売れた唯一の王冠が200万円もするなどというのは『ドラえもん』のなかの架空のネタだが、実際に子ども達にあいだで王冠が熱烈なコレクションの対象になっていた時代がある。


 私が小学生の頃は、コーラやファンタやミリンダなどの清涼飲料水はガラス瓶に入っているものが主流だった。商品の定価にプラスしてガラス瓶の保証金10円を支払って購入し、飲み終えたあと瓶を店に返却すると10円が戻ってくるシステムだった。言うまでもなく、そのガラス瓶のフタにあたるのが王冠である。



 当時のペプシコーラの王冠が、実家の押入れから1つだけ出てきたので写真を撮ってみた。

 王冠の裏面に「¥10」と印刷されている。これは、現金が当たるキャンペーン時のもので、10円の当り王冠である。10円以外に、50円、100円、500円が当たったと記憶している。
 このキャンペーンが子ども心にたいそう魅力的だったのは、当りが出たらその場で現金がもらえたことである。ペプシコーラの事務所へ王冠を郵送するなど面倒な手続きを踏むことなく、コーラを買った店で直接現金を受け取れたのだ。500円という大金が当たることを夢見て、必要以上に何本もコーラやミリンダを飲んだものであるw



 このように、清涼飲料水メーカーが王冠の裏面にくじやイラストなどを印刷して企画を展開する手法を「アンダー・ザ・クラウン方式」というそうである。
 アンダー・ザ・クラウン方式は、ペプシコーラのライバル会社であるコカ・コーラでも行なわれた。王冠の裏面に、当時ブームだったスーパーカーのイラストが印刷されたときが、私には最も思い出深い。栓抜きで瓶から外した王冠の裏ブタをめくるとき、「今度はどんなスーパーカーが出るだろう」とわくわくしたものだ。そして、スーパーカーのイラストの種類の多さに、収集欲を掻き立てられたのである。
 スーパーカーのあとには、『スター・ウォーズ』のキャラクターを使ったキャンぺーンもあったと記憶している。



 コカ・コーラのキャンペーンといえば、米国や香港、日本など世界各国のコーラ瓶のミニチュア・キーホルダーがもらえたこともあった。これも私が小学生のときだったはずだ。当時入手したミニチュア・キーホルダーが、王冠と一緒に1本だけ出てきた。

 コカ・コーラの瓶というと、藤子ファン的にはA先生のブラック・ユーモア短編『内気な色事師』を思い出す。内気な主人公がコーラの瓶を武器にして人の頭を殴りつけるのである。そうすることで彼は、恋焦がれる女性を独占することに成功するのだった。
 相手の命を奪うことで恋する女性を独占するという異常な方法を、もっと美しげなやり方で実行するのが『水中花』の主人公であるw