「ガラパ星から来た男」

 アニメ『ドラえもん』は、6月より藤子F先生の原作にオリジナルエピソードを盛り込んだ展開を進めていくとのことで、8日(金)放送分からサブタイトルが原作とは異なるアニメオリジナルのものになった。たとえば今回は、「カムカムキャットフード」(てんコミ37巻)を原作にした作品が「ドラえもん飼いませんか?」、「ハッピーバースデイ・ジャイアン」(てんコミ23巻)を原作にした作品が「恐怖のジャイアン誕生日」というサブタイトルで放送された。
 サブタイトルに載せられていたアオリ文句がなくなったのは望ましいけれど、これじゃあアオリ文句がなくなったというより、アオリ文句のみが残されただけという気がしないでもない。  
 う〜ん。これで視聴率がわずかでも上がったりメイン視聴者の子ども達が喜んだりするのならまだよいのだが、少なくとも私自身がファンとして思い入れを抱けるような方向性とは違うなあ… 



 さて、当ブログでは前回の記事で「ドラえもん 蟻の国」というグッズを紹介したうえ、「羽アリのゆくえ」「断層ビジョン」といったアリの巣の断面図が描かれた『ドラえもん』作品をとりあげた。
「羽アリのゆくえ」では、擬人化されたかわいらしいアリの姿が多く描かれている。のび太ドラえもんがファンタ・フィルターやファンタメガネを使うと、アリがそのように擬人化されて見えるのだ。
 そこで思い出したのが、私が高校生のころ描いた『ありんこ賛歌』という7ページのマンガである。

 小学生の男の子2人が、空地で見つけた穴を秘密基地にしようと中に入ってみたら、なぜかそこはアリの巣だった、というところから話が始まる。なぜかアリたちは擬人化しており、なぜか小学生2人はアリと同じ大きさになっているというご都合主義ぶりだ(笑)
 2人はアリの巣で強制労働させられ意識を失い、目覚めてみると元の空地に戻っていた。アリが懸命に労働していることを身をもって実感した2人は、地面のアリを知らずに踏みそうになったところでぎりぎり気付き、踏み潰さずに済む。そのアリを眺めながら、「ぼくらもアリを見習わなきゃ」と言って話が終わるのだった。まあ、ありがちな訓話的内容の短い物語である。



 このマンガを私がどういう気持ちで描いたのかほとんど忘れてしまったのだが、内容や絵柄からして「羽アリのゆくえ」から少なからぬ影響を受けたものと思われる。擬人化したアリが目立って登場する『ドラえもん』作品としては、そのほかに「ガラパ星から来た男」が思い当たる。しかし、この作品からの影響で『ありんこ賛歌』を描いたのではないことは確実なのだ。その時点ではまだ「ガラパ星から来た男」は発表されていなかったのだから。
「ガラパ星から来た男」は1994年、「羽アリのゆくえ」は1981年が初出である。そして『ありんこ賛歌』を描いたのが1985年だから、年代的に見ても「羽アリのゆくえ」を読んで得た感動を率直にマンガ化したものが『ありんこ賛歌』だったと考えるのが妥当だろう(笑)



「ガラパ星から来た男」といえば個人的に思い出すネタがあるので紹介したい。


この写真を見ていただきたい。『ドラえもん』の第46巻である。
 46巻? 『ドラえもん』の単行本って最も巻数の多い「てんとう虫コミックス」や「藤子不二雄ランド」でも45巻までじゃなかったの?! と疑問を抱く暇もなく種明かしすれば、この46巻は日本のものでないのだった(笑) 詳しいことはよく分からないが、1994年に中国で発売された単行本のようだ。



 左の写真は、この中国版46巻の表紙全体を写したものである。
 これを見れば、この表紙が「コロコロコミック」1994年9月号の別冊ふろく「ドラえもん ガラパ星から来た男」から流用したものだと判る。だから中身も「ガラパ星から来た男」かと思ってページを開くと、予想はあっさりと裏切られる。「ガラパ星から来た男」は収録されていないのだ。それだけならまだしも、表紙に『机器猫』(中国語で『ドラえもん』の意)とタイトルが堂々と掲げられ、「藤子・F・不二雄」と著者名が記されているにもかかわらず、中身は藤子・F先生が描いた『ドラえもん』ではなく、田中道明先生が描いた『ザ・ドラえもんズ』なのであるw
 とにもかくにも、いいかげんな本だ。 まあ、このいいかげんさが、中国で出回っている品物らしいところだが(笑)


 右の写真が、本物の「ガラパ星から来た男」の別冊ふろくである。この冊子は、「てんとう虫コミックス」の装丁を模しているうえ、「第44.5巻」と巻数表記しているところに気のきいた遊び心があふれていて、コレクター人気が高い。本編のラストページの欄外に「第44.5巻終わり 第45巻に続く」と記してあるのも心憎い演出だ。
「ガラパ星から来た男」という作品自体は、てんとう虫コミックス第45巻に収録されているので普通に読めるのだが、この第44.5巻では、描き足し前のバージョンを読むことができる。作品本編の総ページ数は、第44.5巻版が49ページ、第45巻版が51ページだ。