藤子リスペクトお下劣ギャグマンガ『へっポコ!』の作者と会う

 角川書店マンガ雑誌コミックチャージ」に『へっポコ!』というギャグマンガが連載されている。その作者である渋谷直角さん・石川勝也さんのコンビが、今月5日に発売された『へっポコ!』の単行本の販促活動で名古屋にみえた。そこで、お二人が名古屋滞在中の10日(日)午後、名古屋市内の焼肉屋で食事をご一緒させていただいた。
 3人で焼肉やビールを飲み食いしながら、『へっポコ!』に関する裏話や、藤子作品をはじめマンガをめぐる様々な事柄、創作やメディアについてなど、いろいろな話で盛り上がり、気が付いてみたら5時間弱も焼肉屋に居続けてしまった(笑) 実に興味深くて面白くて刺激になるお話をたくさん聞けて、幸せで楽しい時間をすごせたのだった。



 これが『へっポコ!』の単行本(角川チャージコミックス/2008年2月5日初版発行)だ。

 宇宙からやってきた宇宙芋へっポコが、女子高生アキコちゃんの家に居候して珍事を巻き起こすギャグマンガである。渋谷さんと石川さんによる完全合作で、片方が原作、片方が絵を担当するといった分担制ではなく、アイデアから絵まですべて二人で行なっているという。
“不思議な生物が家庭に居候する”とか、“二人でマンガを合作する”と聞けば、おのずと頭に浮かんでくるのが“藤子不二雄”の存在である。そう、『へっポコ!』は、藤子作品を読んで育った渋谷さんと石川さんによる藤子不二雄リスペクトのマンガでもあるのだ。渋谷さんと石川さんは中学生のとき出会ったマンガ好きの友人同士ということで、そういうところも、小学5年生のとき出会って二人三脚のまんが道を歩んだ藤子先生とイメージが重なる。
 お二人いわく、『へっポコ!』は超本格的な“藤子不二雄ごっこ”とのこと。遊び心と尊敬心たっぷりの藤子不二雄ごっこを、角川書店という大手出版社のマンガ雑誌にて連載というかたちでやってのけてしまったところが画期的で実験的で挑戦的だと思う。


 作品本編にも藤子ネタがいろいろ出てくる。芋が宇宙空間を飛ぶ第1話の冒頭は『21エモン』の最終回を彷彿とさせるし、『ドラえもん』「台風のフー子」のパロディなんかはとりわけ印象的。欄外に「毛の生えた楽器をかき鳴らせ!」というフレーズがあって、こっそりと藤子Aネタを入れ込んでくれているのも嬉しい。単行本の著者近影は、明らかに藤子先生を意識している(笑) ご本人たちによると、藤子不二雄ランドてんとう虫コミックスの見返しを参考にしたそうだ。



 “へっポコ”という名前や“宇宙芋”なる属性から推測できるように、このキャラクターはよく大きなオナラをする。オナラ以外にも、このマンガにはお下劣ネタが満載。へっポコはアキコちゃんにしょっちゅう殴られたり蹴られたりするので、そういう意味ではバイオレンスもいっぱいだ。そうしたお下劣・バイオレンス系ギャグからは、『がきデカ』の山上たつひこ先生へのリスペクトがかいま見える(笑)
 藤子不二雄山上たつひこなど偉大なる先達へのリスペクトやパロディ精神を発揮しつつ、同時に自分らのオリジナリティや芸風を希求しているのが『へっポコ!』という作品なのだ。



 単行本の帯に載った女優・相武紗季さんの応援メッセージは、シンプルかつ素朴ながら、『へっポコ!』という作品の何たるかを端的に言い当てていると思う。

下品すぎっ!! と言いたいけど、なんだか憎めないっっ! がんばれへっぽこ! 地球を守れ!! (相武紗季

 へっポコがどこでどのように地球を守っているかは定かではないが(笑) 相武さんのほかにも、吉田戦車さんや福満しげゆきさんらが応援イラスト&メッセージを寄せている。


 
 単行本にお二人のサインをいただいた。渋谷さん・石川さんともにへっポコの絵を描いてくれたのが最高だ。

 
 渋谷直角さんが今はなき雑誌「リラックス」(マガジンハウス)に連載していた『RELAX BOY』の単行本にもサインをいただいた。

『RELAX BOY』には藤子F先生の『ミノタウロスの皿』をパロったコマもあって目を引かれる。
 数日前に出来上がったばかりという特製『へっポコ!』ステッカーももらえた。

「リラックス」といえば、2002年8月号の藤子・F・不二雄特集を真っ先に思い出すが、渋谷さんはこの特集にも携わっている。


 渋谷さんは現在、某出版社から発売予定の「コロコロコミック」30周年記念本を準備中。関係者へのインタビューや資料的な記事などが満載で、完成したあかつきには500ページのボリュームになるとのこと。本書の発売日がいつになるか楽しみだ。


 渋谷さん、石川さん、名古屋ではたっぷりお付き合いいただいてありがとうございました!