『二人で少年漫画ばかり描いてきた』復刊!

 今月、日本図書センター人間の記録シリーズの1冊として、長らく絶版状態だった藤子不二雄先生の自叙伝『二人で少年漫画ばかり描いてきた』(2010年1月25日第1刷発行、1800円+税)が復刊されました。
 

 この作品は、1975年から76年にかけて「TBS調査情報」という雑誌にて『ぼくはこの歳になって、まだ少年漫画を描いている』なるタイトルで連載され、1977年に毎日新聞社からハードカバーの単行本が刊行されました。単行本化のさい、『二人で少年漫画ばかり描いてきた』に改題。1980年には文藝春秋社から文庫本が出ています。
 今回発売された日本図書センター版は、1977年発行の毎日新聞社版を底本とした、ハードカバー本です。人間の記録シリーズの他の本もそうであるように、非常にシンプルな装丁。毎日新聞社版および文春文庫版には「戦後児童漫画私史」という副題がついていましたが、今回はその副題が外されています。藤子A先生や関係者・識者による新たな解説文・あとがきなどはありません。
 毎日新聞社版を底本としているため、文春文庫に収録された6ページにわたる「文庫版のためのあとがき」は掲載されていません。

 
 ・日本図書センター版『二人で少年漫画ばかり描いてきた』
 
 ・3冊の『二人で少年漫画ばかり描いてきた』を並べてみました


 藤子先生の自叙伝といえば、A先生執筆の自伝的マンガ『まんが道』『愛…しりそめし頃に…』が思い出されますが、これらの作品は事実をベースにしながらも虚構性の高い内容になっているので、『二人で少年漫画ばかり描いてきた』は、より事実に即した、活字による自叙伝として、大変重要だと思います。藤子先生のことを知るための教科書、藤子研究のための重要文献といえるでしょう。多くのマンガ論・マンガ研究の参考文献としてもよく使われています。文章のほとんどはA先生が執筆し、各章の短い「中書き」のみF先生が書いています。



 1987年末の藤子先生のコンビ解消以後、“二人で一人の藤子不二雄”という括りが公式的な場面においてはある種のタブーのようになってしまい、藤子不二雄A藤子不二雄A藤子・F・不二雄藤子・F・不二雄、というふうに分けてではないと取り上げられないような状況が続いていました。それが、昨年の藤子・F・不二雄大全集刊行によって『オバケのQ太郎』『海の王子』といったA先生とF先生の合作マンガが再び流通することになり、さらに今回の『二人で少年漫画ばかり描いてきた』の復刊も加わって、“二人で一人の藤子不二雄”という存在がやや復権しつつあるような印象を受けます。
 日本図書センター版の『二人で少年漫画ばかり描いてきた』は、「藤子不二雄A」「藤子・F・不二雄」という文字が表紙や背表紙に大きく並んで記されていて、公式的な本でこうして両者の名前が堂々と並んでいることに、私は深い感慨をおぼえます



 昨年12月に上梓した拙著『藤子不二雄Aファンはここにいる Book2 Aマンガ論序説編』は、『二人で少年漫画ばかり描いてきた』を主要な参考文献としています。藤子先生に関連した活字の本がこうして短い期間に続けて発売されるのも珍しいことかと思います。この機会に『二人で少年漫画ばかり描いてきた』と合わせて『藤子不二雄Aファンはここにいる Book2 Aマンガ論序説編』を読んでいただけると幸いに思います。藤子マンガの豊饒な世界を活字によってたっぷりとご堪能くださいませ。
 

藤子不二雄AファンはここにいるBook〈2〉Aマンガ論序説編

藤子不二雄AファンはここにいるBook〈2〉Aマンガ論序説編


 話は変わりますが、25日に発売された藤子・F・不二雄大全集パーマン』5巻の特別資料室に、「それゆけ!郵便番号」(1967年)で発表された「パーマンとあたらしい友だちの巻」というマンガ作品が収録されています。これは日本で郵便番号制度が導入されるにあたり、パーマンが郵便番号とはどんなものかを子どもたちにガイドするPRマンガです。
 私はこの「それゆけ!郵便番号」という小冊子を持っているので画像をアップします(ちょっと汚れていますが)。

「それゆけ!郵便番号」は財団法人・日本郵便友の会協会の発行で、B6判、全12ページ(表紙・裏表紙込み)の薄い冊子です。定価は3円。
 10ページ目では、郵便番号導入にともなって生まれたマスコットキャラクターの愛称公募が告知されています(藤子先生とは無関係です)。このキャラクターは、公募の結果「ナンバー君」と名付けられました。ナンバー君は長年のあいだ国民に親しまれましたが、1998年の郵便番号7桁化にともなって登場した新キャラクター「ポストン」に役目をとって替わられ、徐々に姿を消していくことになります。




藤子不二雄A先生が、3月6日、新潟県新発田市の市民文化会館でテラさんをテーマに講演されるようです。でも新潟は遠い…

トキワ荘の兄貴」を知って!藤子Aさん講演へ


新潟県新発田市ゆかりの漫画家・寺田ヒロオさんや作品を知ってもらおうと、街の活性化に向け調査・研究に取り組む「新発田学研究センター」が3月、寺田さんと親交のあった漫画家・藤子不二雄(A)さんを招き、講演会を開く。
        (中略)
トキワ荘」で同時期を過ごした藤子さんは、自伝的作品「まんが道」でも寺田さんについて描いており、「トキワ荘の兄貴・テラさん!」をテーマに講演。また、新発田市内に住む寺田さんの妹や友人が、身近に見た人物像や作品を振り返り、寺田さんの功績を今後の街づくりにどう生かすかを探る。
講演会は3月6日午後1時半から、同市中央町の市民文化会館で。参加無料。問い合わせ、申し込みは敬和学園大教務係(0254・26・2514)へ。


「読売新聞 2010年1月27日17時44分 」の記事より抜粋
 http://www.yomiuri.co.jp/national/culture/news/20100127-OYT1T00017.htm