藤子・F・不二雄大全集第3期第4回配本

 藤子・F・不二雄大全集第3期第4回配本が22日に発売されました。


 ●『大長編ドラえもん』4巻
 
のび太の日本誕生』『のび太とアニマル惑星』『のび太ドラビアンナイト』を収録。毎巻のことながら、カラー原稿がカラーで再現されていることや、これまでの単行本ではカットされていた連載時各回の扉イラストが収録されているのがうれしいです。
 芝山努監督の解説は、映画ドラえもん制作時のエピソードが証言されていて読み応えがありました。F先生は映画ドラのシナリオ草稿を遅らせてしまったさい、原稿に「僕をまんが界の井上ひさしと呼んでくれ」と書いたことがあったそうで、そのユーモアに思わずニヤリとしてしまいました。


 ●『ウメ星デンカ』2巻
 
「小学三年生」(後期)と「小学四年生」に掲載された話を収録しています。単行本初収録の話は8本。
 今巻にも、しのだひでお先生が作画を代筆した話があります。これらの話は、作画に関しては全ページしのだ先生が担当していますが、それでも藤子・F・不二雄大全集に収録されたのは、ネームをやったのはF先生、という判断がなされたからでしょう。
 今回収録されたなかには、私が昔からケッサクだと思っていて大好きな「わしはねらわれているぞよ」があります。冒頭でゴンスケの謎の行動に心をつかまれ、途中で恐怖やドキドキ感があったりしながら、最後にはあまりのくだらなさに脱力させられる…というこの充実感(笑) この話をはじめ、『ウメ星デンカ』のギャグマンガのとしておもしろさを再認識させられる一冊です。
 解説の並松寿さんは、小学館の学習雑誌で『ウメ星デンカ』(『オバQ』『パーマン』なども)担当した元編集者の方。F先生の仕事場へ通ったエピソードを披露されていて興味深いです。締切間際のネーム取りの作業が克明に書かれたくだりがとくによかった。



 ●『SF・異色短編』2巻
 
 1巻に続き、「ビッグコミック」系の雑誌で発表された短編作品を収録。『タイムカメラ』『ミニチュア製造カメラ』『値ぶみカメラ』など不思議なカメラが登場する作品が多いです。これらのカメラを売っているセールスマンは“ヨドバ氏”といいます。この名前はヨドバシカメラから取られています。彼の名前が判明したのは『懐古の客』(「ビッグコミック」1982年8月10日号)においてでした。今でこそヨドバシカメラは各地に店舗をかまえる有名な家電量販店ですが、『懐古の客』発表時点では店舗は新宿地区にしかなく、カメラや写真用品を扱う専門店でした。なので地方在住の中学生だった私には「ヨドバ氏」の元ネタがピンと来ず、当時参加していた藤子不二雄公式ファンクラブ「ユートピア」(現在活動中の「ネオ・ユートピア」は別のサークルです)の会誌でそのことが指摘されているのを読んで「なるほど〜!」と感じたものです。F先生の仕事場は西新宿、ヨドバシカメラの本店は新宿西口という立地なので、カメラ好きのF先生は当時からヨドバシカメラに足を運ばれたりしていたんだろうなあ、と思います。
『女には売るものがある』は、単行本用に描き直されたバージョンに加え、初出バージョンも特別に収録されています。二つのバージョンを読み比べる楽しさを味わえますね。
『異人アンドロ氏』は、いわゆるSF短編作品のなかでは、最後に発表された作品です。
 解説は映画監督の山崎貴さん。


『SF・異色短編』と言えば、現在発売中の雑誌「ブルータス」1月1日・15日合併号の29ページで『絶望の国の幸福な若者たち』の著者・古市憲寿氏がオススメ本の1冊として藤子・F・不二雄大全集『SF・異色短編』1巻をあげています。