伊坂幸太郎『オーデュボンの祈り』

 何年も前から読みたいと思っていて読めないままだった伊坂幸太郎さんの小説を初めて読みました。
 
 読んだのは、デビュー作の『オーデュボンの祈り』。

 日本の領土内にあるのに鎖国状態を保った島…。そこには言葉を操り未来を見ることのできる案山子がいる…。
 そんな不思議な舞台設定と、この先どうなるのかまるでつかめない感覚を味わいながら物語を読み進めるうち、さまざまなパズルのピースがいつの間にやらあちこちから集まってきて、見事に埋まっていきます。その鮮やかさに感嘆するばかり。
 これを機に、ほかの伊坂作品も読んでいこう、と思っています。次は、いま手元にある『魔王』が第一候補。伊坂作品に詳しい友人から、『魔王』を読んだらその次は『モダンタイムス』を、と薦められたので、その順序で読んでみます。



『オーデュボンの祈り』では、リョコウバトのエピソードが重要な役割を果たしています。
 リョコウバトといえば、藤子ファン的には『ドラえもん』の一編「モアよドードーよ、永遠に」が真っ先に思い浮かびます。これは、3月公開の映画ドラえもんのび太と奇跡の島〜アニマルアドベンチャー〜』の元になった話でもあります。


「モアよドードーよ、永遠に」では、ドラえもんのび太が、タイムホール&タイムトリモチを使って絶滅動物たちを現代に連れてきます。その絶滅動物たちの一種が、リョコウバトだったのです。
 のび太は、普通のハトと見分けがつかないから少しくらい他人に見せても大丈夫だろうと思い、リョコウバトを連れて外出します。ところが、それが動物学者の目に留まって一気に大騒動に……といった描かれ方でリョコウバトが劇中に登場します。


『オーデュボンの祈り』は、「モアよドードーよ、永遠に」を意識して書かれたものではないのですが、この小説を書き終えたあとになって伊坂さんは「モアよドードーよ、永遠に」からの影響に気づきました。
 そのへんの話は、2005年発売の「もっと、ドラえもん」第2号に掲載された伊坂さんのエッセイで読むことができます。
 伊坂さんはこう言います。子供のころ読んだ『ドラえもん』の話のなかで記憶に残っているものを一つだけ挙げるなら、「モアよドードーよ、永遠に」になる。この話によって、リョコウバトの存在を初めて知った。『オーデュボンの祈り』で新人賞を受賞した直後のパーティーで、ある新聞記者から、この小説にリョコウバトが出てくるのはドラえもんと関係しているのか、と尋ねられた。そのとき、自分がリョコウバトに興味を持ったのは「モアよドードーよ、永遠に」のおかげかもしれないと気づいた――。


 私が『オーデュボンの祈り』を読みだしたときは、そういった伊坂さんの発言をすっかり忘れていたのですが、この小説を読み進めていくなかでリョコウバトの話が出てきて、あっ、そういえば伊坂さんって『ドラえもん』について語っていたような……と思い出したのです。


【追記】『魔王』を読んでみたら、『ドラえもん』の「バイバイン」ネタが出てきました^^



 ※2月19日(日)、新宿ロフトプラスワンで開催予定の石ノ森スピリッツ「スタジオ・ゼロ物語」というイベントに、藤子不二雄A先生や鈴木伸一先生がゲスト出演される模様。
 http://www.loft-prj.co.jp/PLUSONE/schedule/lpo.cgi?year=2012&month=2