「漫画小屋」探訪記

 きのう23日(日・祝)は、「懐かしの漫劇倶楽部」で知り合ったMさんに、通称「漫画小屋」へ連れていってもらった。
 Mさんは現在、岐阜県岐阜市にご家族と住んでおられるが、それとは別に、岐阜県郡上市(旧八幡町)に二階建ての一軒家を所有されており、その一軒家がまるごとMさんのコレクションの保管庫になっている。その一軒家のことを、Mさんとその仲間内で「漫画小屋」と呼んでいるのだ。


 Mさんは、手塚治虫先生の作品をはじめとした懐かしの漫画全般を中心に、特撮、アイドル、プロレス、映画など多岐にわたるジャンルを愛好していて、その愛好の結果として集まった膨大な量のコレクションを、「漫画小屋」の7つの部屋をたっぷりと使って保管しておられる。
 私のような、漫画本やグッズなどを収集するのが好きな人種にとって、コレクションを保管するスペースの問題は避けて通れぬ悩みのタネだが、その点でMさんは非常に恵まれた環境をお持ちなのである。

 
「懐かしの漫劇倶楽部」会員のKさんと私は、名鉄新岐阜駅前でMさん運転の車に拾ってもらい、そのまま郡上の「漫画小屋」へ向かった。途中コンビニで昼食用のおにぎりなどを買って、目的地に到着。
「漫画小屋」は、農地のあいだに住宅が点在するのどかな環境にあり、周辺を見渡せば山林が近くに迫る清々しい景色の中に置かれている。
 玄関から中に入ると、さっそく、Mさんのコレクションの見学会となった。


 第一に入った部屋は、玩具、日用品から、菓子のパッケージ、空缶、店舗の販促品まで、バラエティに富んだグッズで埋め尽くされていて、さながら巨大なおもちゃ箱のような、心の浮き立つ空間になっていた。その一角には、ドラえもんグッズがまとめて置いてあり、比較的最近の食玩フィギュアから、ドラえもんブーム時代の大きめなおもちゃまで揃っていた。
 この一部屋だけでも充分に見応えがあるのだが、そのあとに訪れた数々の部屋もまた、ディープでまばゆすぎる光景に満ち満ちていた。
 第二の部屋は、Mさんの娘さんの持ち物が多くあるということで、「漫画小屋」の中では比較的薄味の空間であったが、その隣の部屋に移動すると一気に濃度が深まった。
 各種オーディオ&ビジュアル機器とともに、音楽、映画、アニメ、CM、プロレス、アイドルなどを録画した大量のビデオ(市販のビデオソフトも含む)が、壁一面に整然と並んでいて、これが見事なまでに壮観であった。懐かしいベータのビデオまであって、これを再生するためのデッキも保有されているとのことだった。


 この時点で驚きのあまり腰を抜かしていては次に進めない。
 今度の部屋は、いよいよ漫画本のコーナーだ。合わせてプロレス雑誌も保管されている。
 漫画本に関していえば、藤子、石森、水木、桑田、横山、赤塚など巨匠漫画家の著作を中心とした各種単行本、漫画関連の活字本、関連記事掲載雑誌、ムック、複製原画などがところせましとひしめきあっていた。雑誌から好きな漫画作品を切り抜き製本した手製の冊子や、新聞・雑誌記事の切り抜き・スクラップも多く見られた。
 その隣の部屋では、「少年サンデー」や「少年キング」などの漫画雑誌が幅をきかせている。漫画の単行本もたくさん並んでいたし、映画にまつわる書籍や、アイドルの写真集・グッズのコーナーも設けられていた。


 階段で二階へのぼると、左右に一つずつ部屋があって、左側はフィギュア、右側は手塚治虫先生の本&グッズを中心としたスペースになっている。
 フィギュアの部屋には、サイズの大きな本格的な物から食玩のような小さな物まで数多くのフィギュアが飾られており、なかでも、ウルトラセブンのものが質・量ともに充実していた。
 手塚治虫の部屋に入ると、まずは多数の単行本が目に飛び込んでくる。手塚先生の記事が載った雑誌やその切り抜きもあるし、フィギュアやカード、Tシャツ、バッジなどの手塚グッズも集まっている。
 様々な漫画がお好きで、様々なジャンルの趣味をお持ちのMさんであるが、その中でも「手塚治虫」は別格的な存在なのだ。そんなMさんの熱くて深い手塚漫画への愛情が、この手塚部屋いっぱいにあふれていると感じた。


 部屋を巡る途中、ビデオの部屋で昼食をとった。そのさい、Kさんが持参した雑誌「探偵王」1954年新年増刊号を見せてもらった。Kさんは、この「探偵王」を10万円を超える値で購入したという。そんな高額プレミアの雑誌に素手で触れられるなんて、結構興奮する体験だ。
 Mさんが所蔵するビデオを鑑賞させてもらう機会もあった。手塚先生や藤子・F先生がお亡くなりになったときの追悼番組を主に観た。


「漫画小屋」の各部屋すべてにいえることだが、Mさんは本やビデオの並べ方にひとつのポリシーをお持ちで、本・ビデオを横一列に棚に並べたら、その前方の空いたスペースにもう一列重ねて並べるということはなさらない。つまり、すべての本・ビデオの背表紙部分がこちらから見える状態で棚に並べておられるのだ。
 本が前と後ろで二重に並べてあると、前の本をどかさなければ後ろの本を見ることができず、後ろにどんな本が隠れているのか気になって仕方ないところだが、Mさんの並べ方だと、どんな本がそこにあるのか一目瞭然なので、たいへんわかりやすくてありがたい。
 私などは、本棚のスペースの都合で、ほとんどの本を前後二重に並べているうえ、一部の単行本や「コロコロコミック」などは奥行きのある棚を使用して三重に並べているため、いちばん奥の本を取り出そうとすれば結構な労力が要るのだ。
 Mさんは、さらにありがたいことに、ご自分のコレクションを自由に触らせてくださった。コレクションを眺めるだけでなく、それに触れ、中身を見たりすることができたので、楽しさが倍増したのだった。


 そしてまたMさんは、ダブって持っているグッズを譲ってくださった。『オバケのQ太郎』『ドラえもん』のスプーン・フォーク、少年画報社の版権マークのついた(つまり昭和40年代の)『怪物くん』箸入れ、『オバケのQ太郎』のパチもんメンコシート、「フレッシュ少年KING」創刊のチラシ(『フータくんNOW!』の図版入り)、「まんがの日」の景品パズル(『ドラえもん』の図版入り)といった藤子関連グッズや、版権商品なのにパチもんのごとくデッサンの狂った『鉄腕アトム』スプーンセット、『MASTERキートン』トランプなどをいただくことができた。


 6時間ほど「漫画小屋」にいたと思うが、見る物がたくさんあって、そのどれもが興味深く、いくら見てもまだ見続けたい気持ちになって、会話も盛り上がり、あっという間に時間が過ぎていった。