愛・地球博(愛知万博)

 昨日19日(日)、愛・地球博愛知万博)へ、藤子ファン仲間3人とともに行ってきた。
 我々の最大の目的は、愛・地球広場のエキスポビジョンで上映される15分のプログラム「地球に吹く風 〜世界から広場へ」だった。このプログラムのナビゲーターとして、ドラえもんが出演しているのである。大山のぶ代さんから水田わさびさんに声が変わっていちばん初めに一般公開されたドラえもんがこれで、4月15日のテレビ放送開始より前の3月25日から、愛・地球博にてお披露目されている。テレビのワイドショーやニュースで、水田わさびさんが声をあてたドラえもんが初めてお茶の間に紹介されたときも、このプログラムの冒頭の映像が使われた。言ってみれば、「地球に吹く風」こそが、『わさドラ』最初の映像作品だったのである。
 ちなみに、この作品のドラえもんはCGで描かれている。


 愛・地球博に来たからには、他の何を観なくとも、この「地球に吹く風」だけは観て帰らねば来た甲斐がない、という気持ちだった。ドラえもん公式HP「ドラえもんチャンネル」に記載された上映予定時刻を参考にして、我々は、午後2時40分からの部を観ようと愛・地球広場へ向かった。
 愛・地球広場は、全体が人工芝で覆われた傾斜のある広場で、エキスポビジョンは、その広場内にある20m×8mの高性能大型映像装置だ。
 

 愛・地球広場には2時40分よりずいぶん前に行き、エキスポビジョンの正面に陣取って、「地球に吹く風」が始まるのを待ちかまえた。だが、所定の時刻になっても別の映像コンテンツが流れるばかりで、「地球に吹く風」が始まる様子がなかった。その後も30分以上エキスポビジョンを観続けたが、まったく上映されなかった。我々は、〝「地球に吹く風」の上映期間が終了し、別の映像コンテンツに変わってしまったのだろうか〟と不安になった。愛・地球博に来た最大の目的が達成されない、という危機を迎えたのだ。
 そんなとき、一緒にいた友人が、前日の18日に愛・地球博へ行ったドラえもんファンのSさんに「きのうは、ドラえもんの映像を観られましたか?」と携帯メールで尋ねた。すると「6時半ごろに観ました」という返事が届いた。6時半というのは、「ドラえもんチャンネル」に記載された上映時刻とはまるで違っている。
我々は、「どうなってるの?」と戸惑いをおぼえながらも、Sさんからの最新情報にすがりつき、6時半の上映に間に合うように、再び愛・地球広場に足を運んだ。そうすると、実際に6時半から「地球に吹く風」が上映されたのである。もうダメかとあきらめかけていただけに、CGのドラえもんが画面に登場したときは、かなり感動したしホッとした。正しい情報を与えてくれたSさんに感謝したい。


「地球に吹く風」の内容は、世界の風景とそこに暮らす子ども達を紹介するパートと、世界の有名人からのメッセージを伝えるパートの、二つにわかれていた。その全体のナビゲーターを、水田わさびさん演ずるドラえもんが担当したのである。ドラえもんが映像で登場するのは、プログラム全体のうちの冒頭、中間、ラストといった区切りの部分だけで、そのほかの場面では声だけの出演が多かった。
 冒頭、どこでもドアから勢いよく飛びだしたドラえもんは、あちこちに体をうちつけながら繰り返しバウンドする。体勢を立て直し、画面の中央に立ったドラえもんは、ようやく落ち着いて話をはじめる。簡単な自己紹介のあと、「世界の子ども達が大好きな風景を紹介します」とプログラムの案内をした。そうして、タケコプターを頭につけ、世界の国々へ飛び立ったのである。
 アフリカ、ヨーロッパ、南北アメリカ、アジアと巡り、その地域固有のユニークで美しい風景とそこに暮らす子ども達の姿を映し出していった。
 世界巡りを終えたドラえもんが冒頭の場所に戻ると、四次元ポケットがモゾモゾして、中からクモの子を散らすようにおびただしい数のミニドラが飛びだしてきた。このミニドラが、世界の各所へ飛び散って、世界の有名人からのメッセージを愛・地球広場に贈り届けるのだ。
 このパートには、アーノルド・シュワルツェネッガーチャン・ツィイージャン・レノ、グロ・ハルレム・ブルントラント(元ノルウェー首相)、浜崎あゆみ松井秀喜らが登場した。
 最後は、タケコプターで宇宙空間を飛ぶドラえもんが「地球を守りましょう」などと話をまとめて地球へ戻っていくところで締め括られる。
 このプログラムがおもしろいかどうかはさておき、「もう観られないのでは」と一度はあきらめかけた作品を、結果的に観ることができただけでも満足だ。



 私が愛・地球博へ行くならぜひ観ておきたいと思っていたのは、「地球に吹く風」を除けば、ロシア北東部・サハ共和国の永久凍土から発掘されたというマンモスの頭部くらいだった。幼い頃、大昔の動物や絶滅動物の図鑑を観ていると、迫力あるマンモスの絵がよく描かれていて、その牙の長さや形状、毛に覆われた姿などに不思議なカッコよさを感じていた。だから、愛・地球博会場に入場して真っ先にマンモスラボへ向かった。ここに、マンモスが展示されているのだ。少し列に並んだが、長時間待ちを強いられることなく、中へ入ることができた。
 動く歩道に乗って、マンモスが展示されたガラス張りの冷凍室の前をゆっくりと通りすぎる。頭部と左脚1本だけの展示とはいえ、およそ1万年前に絶滅したと言われるマンモスの、本物の皮膚や肉を観られるのだから興奮する*1。3メートルにも達しようかという、大きくカーブした牙が2本、その口のあたりから突き出ているのもいい。動く歩道に乗っているので、マンモスを観られる時間は1分前後だった。もう少しじっくりと観察したかった。


 マンモスラボを出てからは、「あのやたらと長く曲がった牙は、何の役に立っていたのだろう」「メスを奪い合うオス同士の決闘や示威行為などに使われたのか」「長くなりすぎた牙は、実は生きていくうえでは不便なもので、世界のマンモスが絶滅してしまった原因にもなったのでは」などと、何の根拠もなく想像に任せながら、マンモスの牙について語り合った。そんな議論をしていると、マンモスが生きて動いている氷河期のイメージが頭に浮かんできて、脳内がタイムスリップしたような気分になった。
 藤子・F・不二雄先生の『ドラえもん』にも、マンモスが何度か登場している。てんとう虫コミックス7巻所収の「石器時代の王さまに」で大きく細密に描かれたマンモスの絵は、とくに心に残っている。大長編の『のび太の日本誕生』や『のび太と雲の王国』にも、マンモスが出てくる。
 時間旅行や恐竜、絶滅動物などに興味をもち造詣の深かった藤子・F先生にとって、マンモスもまた大好きな動物のひとつだったのだろう。


 一日中、愛・地球博会場にいたが、実際に展示物や催しを観ている時間よりも、待ち時間のほうが圧倒的に長かったような気がする。そもそも、入場ゲートに着いてから会場内に入るまでが長かった。入場ゲートに着いたのが午前9時を少しすぎた頃で、会場に入れたのが10時すぎだったので、およそ1時間ばかり待ったことになる。ペットボトルやコンビニ弁当の持込みを禁止しているため、飛行機に乗るときのように客の持ち物をいちいちチェックしていて、それが入場に時間のかかる大きな原因になっているようだ。
 私は、ドラえもんとマンモスさえ観られれば、あとはどのパビリオンに入ってもよかったし、一緒にいた仲間も、ドラえもん以外にとくに何が観たいという希望はなさそうだったので、気分のおもむくまま適当にパビリオンを巡った。そのなかでとくに長い待ち時間だったのは、「JR東海 超電導リニア館」と「名古屋市パビリオン 大地の塔」で、これが60分から70分待ち。それから、「スペイン館」も結構な待ち時間があった。
 そのほかで我々が入ったパビリオンは、「イエメン館」「カタール館」「イラン館」「中央アジア共同館」「ブルガリア館」「ロボットステーション」くらいだ。
 

 
 この日の入場者は14万3243人。

*1:愛・地球博で展示されているマンモスは、1万8000年前のオスで推定年齢40〜45歳