藤子・F・不二雄大全集刊行スタート!!!

 本日7月24日(金)、いよいよ「藤子・F・不二雄大全集」第1回配本の3冊が発売されました。藤子F作品の全網羅を目指し数年かけて刊行される大全集が、その第一歩をついに刻んだのです。歴史的な第一歩です。
 今年3月に藤子・F・不二雄大全集刊行の第一報に触れて大きな喜びと興奮を味わい、その後断続的に発表されていく新情報に胸を躍らせながら日々をすごしてきましたが、ついに、ついに、その大全集の刊行が現実にスタートしたのです。自宅でとっている「中日新聞」では第2面に広告が掲載されていました。その広告を見るだけで、「今日は記念すべき日なんだなあ」としみじみ。


 書店で現物を見て、「ああ、ほんとうに大全集が出たんだなあ!」と実感。ますます感銘が深まりました。3月以降、刊行開始の日がまだずいぶん先のことのような気がして待ち遠しかったものの、いざ実際にその日が近づいてくるとあまり実感がわかなくなり、イヤにあっさりと発売日が到来してしまったような感覚でした。でも、いま現物に触れてみれば、重みのあるリアリティがジーンと伝わってきて、濃厚に実感を味わえます^^


 今回発売されたのは、『ドラえもん』第1巻、『オバケのQ太郎』第1巻、『パーマン』第1巻の3冊です。
ドラえもん』第1巻は、全部で57編(+予告2編)を収録。以前当ブログでも紹介したとおり、この大全集は、『ドラえもん』という作品が小学館の学年別学習誌で連載されていたという特性を活かして「世代別学年繰り上がり」というこだわりの収録方法をとっています。第1巻は、『ドラえもん』連載の最初期の話から順番に連載が進んでいくかたちで収録されていて、話数の関係で3世代分が同時に収められています。1959年度、1960年度、1961年度生まれの3世代がリアルタイムで触れた『ドラえもん』を今また順番に読めるのです。3種の第1話と2種の最終回が収録されているのが目玉でしょう。新連載予告と連載再開予告まで入れこむ細かい仕事が嬉しいです。
 テレビ朝日でアニメ『ドラえもん』の放送がスタートした当時に「ヘリトンボ」は「タケコプター」と同じ道具ということで「タケコプター」に名称統一されたのですが、この全集では、もともと「ヘリトンボ」だった箇所は「ヘリトンボ」に戻されています。また、「わすれとんかち」の最終ページに、アフリカ原住民の絵がヤクザに描き替えられた箇所があったのですが、ここもアフリカ原住民に戻されました。こういう復元作業は、ファンとして純粋に嬉しいですし、客観的に見ても高く評価できます。自主規制的な配慮から改変されていたセリフも極力元へ戻されているようで、こういうところにも編集スタッフのこだわりが見て取れます。ただし、「きちがい・くるった」系統の言葉については復元しきれない部分があるようです。この系統の言葉の復元が難しいだろうことは事前に予測していたのですが、しかし、実はそういう系統の表記がそのままになっている箇所もあるので、基準がいまいちよくわかりません^^ ともあれ、出来る限り復元していこうという意思が感じられることに頼もしさをおぼえます。
 てんとう虫コミックスなど既存の単行本でトレス版で収録されていた作品については、初出雑誌から復刻するなど、F先生のオリジナル描線の再現にこだわってくれているようで、これも実にありがたいです。
 それにしても、この本の分厚さは圧巻。かつて中央公論社から刊行された愛蔵版単行本を彷彿とさせる厚さです。中公の愛蔵版よりF全集のほうが紙質がマシですけど^^ 手で持ちながら読むと本の重みですぐ疲れそうなので、机の上に置いて姿勢正しく読書しようと思います。



オバケのQ太郎』1巻は、「週刊少年サンデー」に連載されたシリーズの第1話から始まって36話めまでを収録。なんといっても『オバケのQ太郎』という作品そのものの封印が解かれてついに復活したという事実が大きいです。
オバケのQ太郎』はもともと、藤子先生がトキワ荘時代の仲間たちと設立したアニメ会社スタジオ・ゼロの雑誌部の仕事として始めた作品で、藤子F先生とA先生の共著というばかりではなく、石森章太郎氏(当時)を中心に他のマンガ家の筆も入っています。複数の仲間たちで協力し合って仕事をしていたという当時の連帯感や熱気が、雑駁な画面の印象をともないながら『オバケのQ太郎』という作品にパッケージングされています。
 ともあれ、封印作品の代表格だった『オバケのQ太郎』の復活がついに現実のものとなったわけで、そのことに惜しみない拍手をおくりたいです。



パーマン』1巻は、24編を収録。「週刊少年サンデー」に連載されたシリーズです。
パーマン』という作品は、1960年代に連載された旧版と、80年代のリバイバル版に大別できますが、リバイバル版は、旧版で「スーパーマン」だったキャラクターが「バードマン」になるとか、空飛ぶ速度が「時速91キロ」から「119キロ」へ高速化するとか、正体がばれたときの罰が「脳細胞破壊銃でパーにされる」から「細胞変換銃で動物に変身させられる」になるとか、いろいろと設定の変更があって、そのさい旧版のセリフも新設定に合わせて変更を余儀なくされたのです。今回の大全集では、そうした変更箇所が旧版のものに戻されています。バードマンがスーパーマンに、時速119キロが91キロに戻されたのです。しかし残念ながら、「細胞変換銃で動物に変身させられる」は「脳細胞破壊銃でパーにされる」に戻されませんでした。せっかく旧設定に戻すのであれば「脳細胞破壊銃でパーにされる」は非常に大事な部分だと思うのですが、これに関しては自主規制的な配慮が働いてしまったのでしょうか…… もったいないです。今回発売された3冊の満足度はえらく高いのですが、最も残念だったのはこの点です。



 3冊全般に言えることとして、巻頭に4ページ分のカラー口絵があり、F先生のカラー画稿がカラーのまま再現されています。カラー画稿はすべてカラーで再現するのが望ましいと思うのですが、その実現が困難だったため少しでもカラー画稿の再現を試みようと口絵ページを設けてくれたのでしょう。大全集では、大半の作品はカラー画稿もモノクロで印刷されるということになりそうですが、例外的に『エスパー魔美』に関してはカラー画稿はすべてカラーで再現されるようですし、また、「幼稚園」「よいこ」「めばえ」のような幼年誌で発表されたカラー作品は、極力カラーで刊行してくれそうな雰囲気です(「月報1-3」によると、『パーマン』の幼年誌版を収録する巻は「カラー版」で刊行されるようです)。
 巻末には「初出掲載リスト」があって、そういうリストがあるのは当然だとしても、そこで単行本化のさい加筆修正があった作品や画稿の一部を印刷物より複写した作品がわかるようになっていて、こういう配慮は全集の資料性という点でけっこう重要なポイントだと思います。単行本化のさい加筆修正があった作品がわかれば、そうした作品の初出雑誌を重点的に探して初出版を読むという作業が円滑にできるわけですし。
 巻末には「特別資料室」というコーナーもあって、作品の予告や企画ページなどが復刻されています。それらの復刻物は、みなF先生の筆が入ったものばかりなので、「特別資料室」のページもF作品全網羅の一角を担っていることになります。
 各巻に「月報」が挟み込まれていて、ごく簡単な作品解説や資料などが載っています。この月報によって、『ドラえもん』は全20巻、『オバケのQ太郎』は12巻まで、『新オバケのQ太郎』は4巻まで刊行されることがわかります。



 この大全集に収録した原稿については、
藤子・F・不二雄は、雑誌掲載後の作品で単行本を編む際に、多くの場合、自らの意図で原稿に加筆修正を施していました。今回の全集では、それを完成形とみなし、原則としてその形を収録しております。」「作者の意図ではない要因で改変が行われていたと考えられる場合は、原則として可能な限り本来の姿にもどすように努めました。」
という考えが基本原則のようで、そのことに私は共感します。 F先生は加筆修正をよくなさっていたので、贅沢をいえば修正前版と修正後版の両方を併載するのが理想的ですが、それは現実問題として難しいと思うので、それならば、F先生が自らのご意思で加筆修正していった最終版こそ全集に収録するにふさわしいものだと思うのです。そして、F先生の意図ではない改変部分を元に戻すというのは、これはもうできる限りそうしてほしいと思います。


 公式サイトでは、第一期全33巻すべての収録作品のサブタイトルが発表されました。『海の王子』第3巻は、学年誌版を収録。単行本初収録作品ばかりです。『ジャングル黒べえ』は、「毎日新聞大阪版」で発表された4コマ作品まで完全網羅。『パーマン』第8巻には旧版の最終話「スーパー星への道」をリバイバル版用に加筆修正した「バード星への道」を収録。こういう情報に触れているだけでワクワクしてきます!



 藤子・F・不二雄大全集刊行開始、万歳!!!


 
 
 本日発売の「フィギュア王」No.138は特集「大好き!藤子・F・不二雄」です!