「シアターカフェ」と「痕跡本のすすめ」

 26日(日)、名古屋市内にある古書店・シマウマ書房で開催されたトークイベントへ行ってきました。

ブックマークナゴヤ実行委員会 presents
ゴヤの気になるあの人、あのお店のスタッフさんをゲストにざっくばらんに近況をうかがう、
トーク企画:「・・・最近、どうですか?」


《第4回》 2012年2月26日(日) 18:30〜
会 場: シマウマ書房(本山) 店内にて
会 費: 500円(おやつ付・飲食持込可)


トーク1 いよいよ今春オープン!「シアターカフェ」について
出演:江尻真奈美さん、林緑子さん


トーク2 『痕跡本のすすめ』出版記念トーク
出演:古沢和宏さん(五っ葉文庫)
http://www.bookmark-ngy.com/category/j-event

 上記告知のように、イベントは2部構成。
 1部は、今春(4月1日)名古屋の大須でオープンを予定している「シアターカフェ」の代表者・江尻真奈美さんと林緑子さんのトークでした。


 シアターカフェは、その名称のとおり、映像とお茶を楽しめる空間で、今の名古屋にはないような新たなコンセプトでの上映スペースを目指す施設です。
 埋もれてしまっているけれど良質な作品、上映の場に恵まれない作品、現在は有名になった監督の無名時代の作品、東京では公開されるのに“名古屋飛ばし”されてしまう作品などセレクトして上映していきながら、人々が集える場、皆で映像作品を観ることの喜びを味わえる場を提供していきたい、という熱い思いがお二人の話から伝わってきました。
 愛知県民の一人として、名古屋にこうした文化的な場ができるのはじつに嬉しいことです。いっしょにトークを聞いた友人と「オープンしたら行ってみたいね」という話になりました。
 http://www.theatercafe.jp/



 2部は、『痕跡本のすすめ』の著者・古沢和宏さん(古書「五っ葉文庫」店主)のトークでした。『痕跡本のすすめ』は、太田出版から先月刊行され、話題を呼んでいます。
 
 “痕跡本”とは何か…。
 古書店でよく本を買う方なら何度も体験したことがあると思いますが、購入した本に、前の持ち主が書き込んだ文字やラインや落書きなどが残っていることがありますよね。書き込みだけじゃなく、どこかが破ってあったり折り曲げてあったり…。メモが挟んであったり…。
 そうした、前の持ち主の痕跡が残っている本のことを、古沢さんは「痕跡本」と名づけたのです。


 古本によく接する人なら誰でも知っている事象に「痕跡本」と名称を与え、光を当てたところに、古沢さんの着眼点の新奇さがあると感じます。
 一般的に言って、古本業界・古本ユーザーにとって、前の持ち主の痕跡の残った本は、綺麗な古書より「価値が劣るもの」とされますし、古本を買って書き込みや傷みなどを見つけたらがっかりするものなのですが、古沢さんは、そうした痕跡の残った本を積極的に収集し、それを「おもしろいもの」として鮮やかにクローズアップしています。


 本に残された痕跡から、前の持ち主の“物語”を想像する…。この人はこんな事情でこの言葉を記したのではないか、この人はこのような性格だったのではないか、この人はこんな思いでこの本に接していたのではないか、などと妄想をめぐらせる…。それが、古沢さんによる痕跡本の基本的な楽しみ方です。
 想像できる余地の大きいものや妄想を膨らませてくれるものであればあるほど、魅惑的な痕跡本ということになります。
 

 古沢さんのトークは勢いがあって楽しかった。時間がたつのが早く感じられました。
 このトークイベントには東京から太田出版の担当編集者の方も駆けつけ、古沢さんと二人で『痕跡本のすすめ』出版に至るまでの経緯や裏話を披露してくれました。
 太田出版というとサブカル好きの人に読まれる本が多いとのイメージだけれどこの本の装丁はあえてサブカルっぽさから遠ざけたとか、ハードカバーであることへのこだわりだとか、価格設定に関することだとか、レイアウトの話だとか、編集者もトークに加わっているからこその興味深いお話を聞けました。
 古沢さんからは、原稿執筆時の苦労談や、企画が途中で頓挫してしまうのではないかと不安に襲われたことなども聞けました。


 トーク終了後は、持参した『痕跡本のすすめ』に古沢さんと編集さんのお二人からサインをいただきました。
  
 短い時間でしたが、お二人とお話をさせていただくことができました。
 古沢さんは私と同じ春日井市に住んでいらっしゃるということで、それだけでも何だか盛り上がってしまいました(笑)
 編集さんとは、『ドラえもん』にまつわる都市伝説の話題になったりもしました。 この編集さんは、少し前まで雑誌「オトメコンティニュー」を担当されていたそうです。
 古沢さんも藤子マンガが好きだとおっしゃっていました。 (というわけで、今回のエントリでも藤子ネタに到達できてよかった・笑)