首長竜・鯨のひげ・三葉虫・アンモナイト…

 名古屋市科学館で開催中(3月17日〜6月10日)の特別展「OCEAN!海はモンスターでいっぱい」へ行ってきました。海の生物の生態や進化を、骨格標本(レプリカ含む)や剥製などを見ながら楽しく学べる展覧会です。
 http://oceanmonster.jp/index.html
 
 会場に入ると、鯨や首長竜など、巨大な生物の骨格標本が目に飛び込んできます。やはり巨大な生物というのは、ただ巨大であるというだけでダイレクトに感動を授けてくれます。
 
 この鯨は、クロミンククジラといいます。体長9メートルですが、ナガスクジラの仲間では小さめです。
 
 これはタラソメドンという首長竜の一種。全長12メートル、そのうちの半分は首の長さです。
 首長竜というと、大長編ドラえもんのび太の恐竜』に登場したピー助(フタバスズキリュウ)が真っ先に思い出されます。この特別展のパンフレットでも、『のび太の恐竜』に首長竜が登場したことで恐竜や化石に興味のない人でも首長竜のイメージを思い浮かべやすくなった…といった意味のことが解説されています。
 ただし、今回の特別展にフタバスズキリュウ関連の展示はありませんでした。
 
 この垂れ幕に描かれた首長竜の絵は、色合いからピー助を彷彿とさせます(笑)
のび太の恐竜』には、エラスモサウルスという首長竜も登場します。エラスモサウルスの前ひれの化石がこれです。
 
 エラスモサウルスは『のび太の恐竜』のなかで、ピー助をいじめる役として登場しています。のび太は一度白亜紀へピー助を帰しますが、後日タイムテレビでピー助の様子を見たらエラスモサウルスにいじめられていたので、ピー助を白亜紀に帰したのはよいが帰すべき場所を間違えたことを知り、日本へ連れ戻そうと再び白亜紀へ出かけます。そこから白亜紀を舞台にした大冒険が始まるわけです。
のび太の恐竜』ではフタバスズキリュウを人間と心を通わす親しい存在として描いていますが、凶暴な存在として描いた藤子F作品もあります。『T・Pぼん』の第1話「消されてたまるか」です。海に落ちたリーム・ストリームを襲ったのがフタバスズキリュウだったのです。


 鯨のひげの展示もありました。
 
 下の写真は鯨のひげに実際に触れられるコーナーです。
 
 鯨のひげといえば、『T・Pぼん』の「T・P隊員の犯罪」で鯨のひげにまつわるエピソードが紹介されています。鯨のひげを材料にした女性用のコルセットが大流行し鯨の乱獲が行なわれた、という話です。
ドラえもん』の「もどりライト」のラストでは、しずちゃんが弾くバイオリンにもどりライトの光線をあてたら鯨になってしまいます。バイオリンの弓の原料が鯨のひげだったのです。しずちゃんの家の窓から巨大な鯨が突き出ている光景はシュール(笑)


 
 
 この2枚の写真は、アルケロンの顔と甲羅の骨格(レプリカ)です。
 アルケロンは「アーケロン」という表記で『のび太の恐竜』に出てきますね。アーケロンは史上最大のウミガメだったそうですが、アーケロンのような巨大なウミガメが登場する話で最も印象的なのは『ドラえもん』の「大むかし漂流記」です。海に浮かぶ小島かと思っていた物体が実は巨大なウミガメの甲羅だった、という話です。この話では、巨大ウミガメの甲羅や顔がとても細かくリアリスティックに描かれていて真に迫っています。
「大むかし漂流記」の劇中では巨大ウミガメの種類が特定されていませんが、小島が巨大ウミガメの甲羅だとわかったときのび太は「プロガノケリスとかアーケロンとか……」と言います。『藤子・F・不二雄 恐竜ゼミナール』(1990年)によると、この巨大ウミガメはプロガノケリスらしいです。


 
 
 これはアンモナイト各種です。
 原始的なアンモナイトは殻がまっすぐでしたが、その後いろいろな巻き方のものが登場しました。巻き方のゆるいものやソフトクリームのような巻き方のアンモナイトもいます。
 アンモナイトもまた『のび太の恐竜』に登場する古代生物です。白亜紀の海中で遊んでいたジャイアンスネ夫が巨大なアンモナイトを見つけ、持って帰ろうとしたらその下敷きになってしまう、という場面があります。
 今回の特別展にも結構大きなアンモナイトが展示されていました。
 
T・Pぼん』の「バカンスは恐竜に乗って」では、ぼんとリームが1億9千万年前の南アフリカへ遊びに行き、海中に潜ったぼんがアンモナイトを見つけて手に取ります。このときぼんは、テーブルサンゴ、海ユリ、アンモナイトの順で古生物を見つけていきますが、のちに「浦島太郎即日帰郷」という話でぼんとユミ子が同じ場所を訪れたときも、テーブルサンゴ、海ユリ、アンモナイトの順で見つかっています。そして、ユミ子がアンモナイトを手に取る場面は、「バカンスは恐竜に乗って」でぼんがアンモナイトを手に取る場面の再現シーンのようになっています。
 SF短編『白亜荘二泊三日』にも、作中人物がアンモナイトを手に取る場面があります。


 
 
 三葉虫も、いろいろな種類の化石が展示されていました。科学館の学芸員さんによると、三葉虫は、今の生き物でいえばフナムシみたいな感じだったそうです。分類的にはカブトガニに近いと考えられています。
 三葉虫が登場する作品といえば、『ドラえもん』の「化石大発見!!」です。この話では、新種の三葉虫が発見されます。古生物学者になりたかった夢を年を取ってから追いかけている老研究者が「大発見だ!」と大喜びした数々の化石…。じつはそれがドラえもんのび太による四月バカのニセ化石だったとわかり、老研究者は大きなショックを受けるのですが、その直後、新種の三葉虫がニセ化石のなかにたまたま紛れ込んでいるのが見つかって、「世紀の大発見!」となるわけです。四月バカと知ったときの老研究者のひどい落胆ぶりが読者である私にとってもショックだっただけに、ラストの三葉虫大発見の喜びは絶大でした。



 シーラカンスの剥製の展示も興味深かったです。
 
 内臓が見えるように展示されており、そこに卵もありました。魚類にしては異様に大きいのがシーラカンスの卵の特徴です。
 シーラカンスは、胎内で卵を孵化させるそうです。胎内で卵を孵化させるといえば、上述の首長竜も胎内で卵を孵化させていたことが近年になって判明したということです。