藤子・F・不二雄大全集第3期第9回配本

 25日(金)、藤子・F・不二雄大全集第3期第9回配本の2冊が発売されました。
 
●『新オバケのQ太郎』第3巻
 F先生のギャグセンスの結晶である『新オバケのQ太郎』。その第3巻は「小学五年生」「小学六年生」と高学年向け学習誌に連載された話を集めています。
 高学年向けだけあって、一話一話の面白さの濃度が高めです。月報にあるとおり、好きな相手に好かれたい…というような恋の話が多くなっていますね。オバケたちが新聞社を始めて“ペンは剣よりも強し”の精神を実践しようとしたり、けっこう本格的な裁判をやったりする話もあります。


 今巻の1話目から、『新オバQ』における迷バイプレイヤー“ヒョーロクさん”が大々的に出演してくれていて引き込まれます(笑)
 2話目に収録された「よふかし赤ちゃん」は、冒頭でまず出来事の「結果」が描かれ、その後、その結果を招いた「原因」がお話として綴られていく…という構成が印象的な一編です。少し前に金環日食が話題になりましたが、この話にも「日食」ネタが出てきます。



『新オバQ』では、オバケたちに化ける能力があることから、同一キャラクターが2人以上いる!という状況がよく生じます。その2人以上になった同一キャラクターが同じ場に揃うこともあれば、別々の場所で行動することもあります。今巻においては、正ちゃんとよっちゃんがそれぞれ2人ずつ存在する状況や、伸ちゃんが最高4人になるといった話などを読めます。
 化けるという方法以外の理由でQちゃんが同じ時間・同じ場所に2人存在する、なんてパターンも見られます。このパターンは、『ドラえもん』ではよく見られますね。


「小学六年生」連載版のファーストエピソードは、Qちゃんが5年ぶりに人間の世界へ戻ってくる再会の話、そしてラストエピソードはQちゃんがオバケの国へ帰っていくお別れの話で、さらに連載終了後に発表された番外編も収録されています。


 解説は、京極夏彦さん。
 奥付の「協力」のところには、私の名前を載せていただいています。



 
●『大長編ドラえもん』第6巻
のび太の創世日記』『のび太と銀河超特急』『のび太のねじ巻き都市冒険記』を収録。F先生が描いた大長編ドラえもんシリーズのラスト3作です。


のび太の創世日記』は、広げすぎた物語をうまく収束させることができなかったことなどあって作品全体の完成度としては難がある作品…と評されることが多く、私もその評価には納得できるのですが、この作品は、F先生が好んだ創世テーマや神話・民話モチーフの総決算的な大作であり、私はこの題材を愛しているので、個人的には愛着が強いです。
 さらに個人的なことを言わせてもらえば、物語の冒頭に「タカヒロちゃん」という子どもが出てきて、その名が私の名と同じというところに親しみをおぼえます(笑)


のび太の銀河超特急』は、藤子F版『銀河鉄道の夜』(あるいは『銀河鉄道999』)として見ることができますが、前作『創世日記』がややハイブロウなテーマだったリしたことの反動で、ストレートな娯楽作になっています。


のび太のねじ巻き都市冒険記』は、ご存じのとおりF先生の絶筆となった作品…。
 この作品に触れると、どうしても当時の悲しみが蘇ってきます。悲しみが蘇ってこないときでも、当時の記憶がどこかしら頭の片隅に浮かんできます。そうした悲しみや記憶に加え、F先生の絵じゃないページが圧倒的に多く、F先生がペン入れをしたページも体調の悪さが如実で、この作品の物語内容に純粋に没入して読む、ということがなかなかできません。(映画だと、まだ普通に観られるのですが…)
 今巻はまだ読めていませんが、今の私がこの物語をどう受け止めるのか、自分でも興味がわきます。


 解説は、むぎわらしんたろうさん。今巻収録作の制作にチーフアシスタントとして携わった人なので、解説は適任だと思います。
 この解説の中に、F先生が『2001年宇宙の旅』のラストの解釈をとうとうと語ってくださった、というエピソードが出てきます。私もF先生があの映画をどう解釈されたのかうかがってみたかったです。それと、F先生は練乳のかき氷アイスが好物だった、という話もあり、私も大好きなのでちょっと嬉しかったです(笑)