『南の国だよ!ドラえもん タイで人気爆発!!』

先日、当ブログでベトナム藤子・F・不二雄先生に関する話題を少し取り上げました。
http://d.hatena.ne.jp/koikesan/20130929
この記事を書いたとき、「そういえば2人の藤子先生がドラえもんブームに沸くタイへ行った番組があったなあ」と思い出しました。ベトナムもタイも、ドラえもん人気の高い東南アジアの国、という共通性があります。
 その番組とは、1983年4月7日(木)テレビ朝日系列で放送された『南の国だよ!ドラえもん タイで人気爆発!!』です。2人の藤子先生が、タイを観光したり、タイのテレビ番組に出演したり、タイの小学校を訪問したり、タイの海岸で遊んだりと、藤子先生ご本人たちが主役の番組でした。



 藤子先生がタイを訪れたのは、タイのテレビ番組に招待されたからです。前年の1982年からタイで『ドラえもん』が始まり(出版もテレビも)、翌83年には大ブームに発展、その原作者である藤子先生がご当地に招かれたわけです。当時の藤子先生は「2人で1人の藤子不二雄」でしたから、藤本先生(F先生)も安孫子先生(A先生)も『ドラえもん』の作者としてタイを訪れています。


 タイに到着した藤子先生を出迎えてくれたドラえもんとドラミちゃんの着ぐるみが、なかなか味わい深くて、独特の印象を残しました。ドラえもんの目玉って、通常は「白いマルの中に黒い点」ですが、このときのドラえもん着ぐるみは「黒いマルに白い点」と白黒が反転していたのです。その目玉は、少し不気味ですらありました。さらに、番組中で藤本先生も指摘していましたが、ドラえもんよりドラミちゃんのほうが背が高い、という違和感も無視できませんでした(笑)


 タイを観光中の藤本先生は、頻繁に8ミリカメラを回していました。これはもう、旅行中の藤本先生の定番のお姿ですね。
 タイの小学校では、校庭に集まった児童たちの前で藤本先生がドラえもん、安孫子先生がのび太を描くパフォーマンスも見られました。


 藤子先生はタイの海岸でパラセーリングを体験しました。バラシュートをモーターボートで引っ張って空中を飛ぶレジャーです。藤本先生は着陸時にちょっと覚束ない足取りで「ああ、おもしろかった…」と感想をつぶやきました。このパラセーリング体験がよほど印象的だったようで、後年インタビューで何度かこの体験を引き合いに出しておられました。

飛行感覚というものは、多くの人にとって魅力あると思うんです。ジャンボ・ジェットなんかになってしまうと、ほとんど魅力はありませんが、セスナとか、ヘリコプターとか、小さくなると楽しいですね。一〇年くらい前、タイの海岸でパラセールに載ったことがあるんです。モーターボートで引っ張ってもらって空中に上がる。あれは、楽しかった。飛んでるって実感が、それまでで最高に味わえた。もう少しぼくに運動神経があればね、ハンググライダーとかいろいろやってみたいんですけどね」(「よむ」1993年6月号)

 さらに後年、F先生は日本国内でパラセーリングのごとく魅力的な飛行体験を味わいました。1988年に「ドラえもん夢気球スペシャル」というキャンペーンがあって、「ドラバルくん」というドラえもん型熱気球が登場しました。F先生はそのドラバルくんに乗って空を飛んだのです。

気球ははじめすこし高く上がったあと、30メートルくらいの高さをゆったりととんでいきました。地上のものがありありと見える高さをとんだわけです。小川をよこぎるときには、ドラえもんが水面にうつって、スーッと動いていきます。下を走っている自動車や、つりをしている人のすぐ上をとんでいくのですが、わたしは生まれて初めて、そんな角度からものを見ました。
やく30分、とんだきょりは4キロメートルくらいでしたが、ゆっくりと空をとんでいく乗りごこちは、今までに乗ったどの飛行機ともちがったふしぎなものでした。のび太タケコプターでフラフラと空を飛ぶ感じは、これなんだなぁと、わたしははじめてじっかんしました」(「ドラえもん夢気球」小学館、1989年)

 パラセーリングや熱気球に乗ったF先生の感想コメントを読んでいると、F先生にとってタケコプターがいかに理想的な飛行道具であるかが伝わってきます。タケコプターは、まさにF先生の「こんなふうに空を飛んでみたい」という夢が率直に込められたひみつ道具だったわけですね。