終戦の日に

 終戦の日、『ドラえもん』の「ぞうとおじさん」を再読しました。

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  通常はてんとう虫コミックスで読み返すことが多いのですが、今日はあえて藤子・F・不二雄大全集で読みました。

 なぜか?

 9年前に名古屋で大山のぶ代さんの講演会が開催されました。そのとき大山さんは「ぞうとおじさん」の話をされたのですが、手もとに大全集『ドラえもん』4巻と愛用のドラえもんメモ帳を置いておられたので、そのことに敬意を表したのです。

 

 大山さんはその講演会で、現実の戦時猛獣処分および童話『かわいそうなぞう』のなかで殺されることになったゾウを「ぞうとおじさん」で救ってくれたF先生を称賛されていました。「心をもってゾウのことを考えたやさしいおじさん」という言い方で。

 

 F先生のご長女によると、先生は『かわいそうなぞう』に限らず子ども向けの物語が悲劇で終わることをあまり好まなかったそうです。『フランダースの犬』の最終回に娘さんたちは感動して大泣きしたのですが、F先生は「正直でやさしく、働き者が報われないのはかわいそうすぎる」と真剣に語っていたとか。

 

  講演の最後に大山さんは

 「戦争はもう二度と起こしてはなりません」

 と訴えて話を終えられました。

 

 

 ※追記

 藤子仲間のW氏が、上掲のF先生のご長女の話を読んで「ペロ!生きかえって」を思い出したそうです。この話も「ぞうとおじさん」と同じく、死ぬ運命にあった動物の命を救う内容ですし、なにしろ犬の話ですからご長女が挙げた『フランダースの犬』と印象が重なります。

 「ペロ!生きかえって」は、死んだばかりの犬の命を救ってしまうわけですよ。作中でドラえもんが「死んだものを、生きかえらせるなんて…。いくらぼくでもできることと、できないことがあるよ」「考えてもみろ。そんなことができるものなら、地きゅうは、生きものでうまってしまうよ」と真剣に訴えているように、死んだものを生き返らせるなんてことは、本来ならありえないし、やってはいけないことでもあるのです。でも、ペロを亡くして深く悲しむしずちゃんへの思いから、ある種のタブー破りをして、いったんは死んだペロの命を救ってあげるのです。