昭和の日

 本日(4月29日)は「昭和の日」です。

 

 昭和の時代に生まれ育った身なので昭和といって思い出すものがあまりに多すぎます。昭和について何かひとつを選んで話題にするのは非常に難しいです。

 そんななか、今回「昭和の日」を迎えて藤子ファン的にパッと頭に浮かんだものがあります。

 「昭和村」です。

 

 昭和村は、『21エモン』の初期エピソード「ワントナック公爵」(初出「週刊少年サンデー」1968年5号)に出てくるテーマパーク。21エモンの言葉によれば、昭和時代までの古いものがみんなまとめてある場所です。

 この昭和村、「ワントナック公爵」が描かれる3年ほど前(1965年3月18日)に愛知県犬山市で開園した明治村からヒントを得たものと思われます。明治村の昭和版みたいな発想でしょう。

 

 昭和村には、東京タワーや高層ビル街や団地アパートや新幹線などが展示されています。『21エモン』が連載されたのは昭和の真っ只中。それも昭和40年代前半のことですから、超高層ビルや新幹線なんて未来的なイメージを帯びた最新のものだったはずです。

 日本に登場したばかりの最新のものやバリバリで現役のものが“昔のもの”“古いもの”として一箇所に集められた昭和村の光景は、当時の読者からしたらセンス・オブ・ワンダーを喚起されるものだったはずです。すこしふしぎな驚きを得られる光景といいましょうか。昭和50年代になってから『21エモン』を初めて読んだ私にもそういう魅惑的な感覚が生じました。明治村が自宅からそう遠くなかった(中学校の遠足では徒歩で明治村へ行ったほどだった)こともあり、明治村のパロディ的な味わいのある昭和村になおさら胸がときめきました。

 

 ところが、『21エモン』で描かれた作中世界の年代と同じくらいの年代が現実に到来した今となっては、昭和のものを“懐かしいもの”“文化財的なもの”としてテーマ化した博物館や施設がいろいろできています。

 平成15年(2003年)に、岐阜県美濃加茂市に「日本昭和村」という愛称のテーマパークがオープンしました。そのときは『21エモン』の昭和村をただちに思い出し、「おお、リアル昭和村だ!」とちょっと感嘆したものです。(ただし、日本昭和村は平成30年にリニューアルされ「ぎふ清流里山公園」と名称変更されました)

 『21エモン』で描かれた昭和村的な施設が(昭和村そのままではないにせよ)現実化しているなあと実感し、それとともに、自分にとって現在だったはずの昭和がだんだん昔になっていくなあ、との思いを強めています。