今年ももうじき幕を閉じます。当ブログにアップしようと思っていたのに、タイミングを逸したり何なりでアップしそびれていた話題がいくつかあります。
そこで、今年を振り返る意味も少し込めまして、そういった、すでに過ぎ去った話題をこの年末になって書き残しておこうと思います。
そういうエントリについては【アップしそびれていた話題】と記します。
今回はその第1弾です。
今年のはじめ、1月2日の夜のことです。
藤子仲間のとりかさんが主催する「『のび太と銀河超特急』同時鑑賞会」に参加しました。
とりかさんが主催する「映画ドラえもん同時鑑賞会」はすでに数回開催されており、たぶん私は今のところ皆勤のはずです。
同時視聴会とは、参加者各人が自宅で映像ソフトやネット配信を利用して同じタイミングで同じ作品を観始め、観ている最中、ツイキャスを使ってその都度リアルタイムで感想や反応やツッコミなどをコメントしていく、というものです。全国の各人が家にいながらにして映画ドラえもんを一緒に観ながらワイワイ雑談している気分になれる、じつに楽しい会です。
その同時視聴作品が、1月2日は『のび太と銀河超特急』だったのです。
映画の同時視聴が終わってからは、アフタートークとして私が出演し、とりかさんと『のび太と銀河超特急』の感想やトリビアなどを語り合いました。
・映画『のび太と銀河超特急』前売りプレゼントのクリアファイル
・劇場で見かけると押したくなるスタンプ
そんな同時視聴会のなかで、私は『のび太と銀河超特急』に登場する「ぺたり手ぶくろとくつ」は25年ぶりに登場したひみつ道具!とコメントしました。
【画像は『映画ドラえもん超全集』(小学館、2020年発行)より】
25年ぶりに登場した、ということをもう少し詳しく述べますと、このひみつ道具は『ドラえもん』連載最初期のエピソード(初出:「小学二年生」1970年4月号)に初登場して以来、25年ぶりに『のび太と銀河超特急』の原作マンガに再登場したのです。
『のび太と銀河超特急』の原作マンガ執筆時、藤子・F・不二雄先生が「こんな道具があったはず」と記憶で絵を描き、それを手がかりにアシスタントさんが探したところ、その当時から25年も前に登場していたひみつ道具だったことが判明したというのです。
このエピソードは、むぎわらしんたろう先生が「(F先生は)古いことでも信じられないほど覚えていました」という驚きとともに披露してくださったものです。
(「ぺたり手ぶくろとくつ」の初登場エピソードは藤子・F・不二雄大全集『ドラえもん』2巻に収録されていますが、そこでは「ペタリぐつとペタリ手ぶくろ」と表記されています)
「ぺたり手ぶくろとくつ」は、平面にペタリと張りつくことができる道具です。アマガエルやヤモリの手足のように指先が丸っこい吸盤状になった手ぶくろとくつを自分の手足にはめて使います。
四つん這いの状態で垂直の壁をのぼったり、天井を進んだりできます。『のび太と銀河超特急』では、銀河超特急の屋根の上から吹っ飛ばされないよう張りつくため使われました。
その「ぺたり手ぶくろ」に似た道具が、手塚治虫先生の初期SF作品『来るべき世界』(1951年発表)で見られる、というトリビアにも触れておきましょう。
『来るべき世界』のストーリー序盤での出来事です。新聞記者になったばかりのロック少年が、「ぺたり手ぶくろ」に似た手袋をはめて建物の壁に張りつき上へのぼっていくのです。『ドラえもん』では手ぶくろとくつがセットですが、『来るべき世界』では手ぶくろのみです。
『来るべき世界』が藤子・F・不二雄先生におよぼした絶大なる影響を勘案すれば、『ドラえもん』の「ぺたり手ぶくろ」のルーツが『来るべき世界』に出てきたその手袋だったのではないか、と推定したくなります。藤子F先生が「ぺたり手ぶくろ」を描くさい明確に意識されていたかどうかは不明ですが、そう推定することに無理はないでしょう。
※『来るべき世界』が藤子F先生に及ぼした絶大な影響については、以前当ブログで書いたことがあります。今回のエントリと合わせてお読みいただければ幸いです。
・藤子先生にとっての『来るべき世界』
https://koikesan.hatenablog.com/entry/20161108